英会話でネイティブの話が聞き取れない方へおすすめの「速読」

英会話でネイティブの話が聞き取れない方へおすすめの「速読」

英会話の学習を長く続けている中上級者の方の中には、

「英語でコミュニケーションを取ることはできるが、ネイティブの英語はさっぱり聞き取れない」

「リーディングならある程度理解できるが、リスニングとなると自信がない」

という方は多いのではないでしょうか。

この記事では、リスニングにおいて発生する

  1. インプットの問題
  2. 情報処理の問題

という2つの問題について解説しています。

また、2つ目の問題である情報処理速度向上のため、英語を日本語に訳さずに英語のまま理解する訓練方法としての速読を紹介します。

この記事の要点

●ネイティブ英語が聞き取れない原因

  1. インプットの問題
  2. 情報処理の問題

●英語を日本語に訳さずに英語のまま理解するための速読訓練

ネイティブ英語が聞き取れない原因その1:インプットの問題

ネイティブ英語が聞き取れない原因その1:インプットの問題

英語に限らず、人間が言語を耳で聞いて頭で理解する時には、次の2つのステップを踏みます。

●言語を理解する際の2つのステップ

  1. 音声認識
  2. 意味理解

この章では、1つ目の音声認識、つまりインプットする際に発生している問題について詳しく解説していきます。

音声のインプットが上手くいかない理由は、次の2つに分けられます。

●音声のインプットができない理由

  • 発声 / 発音に関する知識、経験の不足
  • ボキャブラリーの不足

発声 / 発音に関する知識、経験の不足:習うより慣れろ

はじめに、リスニングにおける最も小さな構成要素は「音」であると言えます。

したがって、そもそもの英単語の発音や発声に関する規則を知らないと聞き取れない場合があります。

この章では以下の3つの項目について解説しています。

覚えておきたい英語の3つの発音・発生についての規則

  1. 単語の発音を知らない、あるいは誤認識している:例)career
  2. リエゾン、リダクション:例)Check it out.
  3. アメリカ英語 / イギリス英語の違い:例)either

これらの規則については頭で理解するよりも、実際にたくさんの英文を聞くことで身につけていきましょう。

「習うより慣れろ」です。

単語の発音を知らない、あるいは誤認識している

●例文:career
「コリア」

当然ですが、英単語を文字では知っていても発音を知らない、つまり実際の音と意味がリンクしていなければリスニングで内容を理解することはできません。

例に挙げた“career”の発音は、カタカナで表すとほとんど「コリア」に近いのではないでしょうか。

少なくとも日本語の「キャリア」と思っていると聞き取れないでしょう。

英単語を覚える際は文字としてだけでなく発音も意識して覚えることが不可欠です。

リエゾン、リダクション

●例文:Check it out.
「チェキラ」

リエゾン(Liaison)は連絡、接触、あるいは連結(連声)を意味します。

リダクション(Reduction)は縮小、削減、あるいは脱落の意味です。

これらは実際の表記や発音を言いやすい形に変えることです。

日本語でも「英語」は「え い ご」ではなく、「え ー ご(え え ご)」、「体育」は「た いい く」ではなく、「たいく」と発音されます。

英語でも同様に、”Check it out.”は「チェック イット アウト」ではなく、「チェキラ」と語間が滑らかになっています。

地域による発音の違い

●例文:either
「イーザー(US)」
「アイザー(UK)」

「音」に関する問題として最後に挙げられるのは地域による発音の違いです。

典型的な例で言えば、”Hot dog”はイギリス英語では「ホッ ドッグ」と聞こえるのに対し、アメリカ英語では「ハッ ドッグ」と最初の”o”がほとんど”a”に聞こえるでしょう。

他には”either”「イーザー(US)」「アイザー(UK)」など例を挙げればキリがありません。

またオーストラリアでは上記の2つとはまた違ったアクセントがあります。

この章の冒頭で述べたとおり「音」の問題については、「習うより慣れろ」で体系的に学習するよりも実際に多くの英文に触れることで、耳、そして脳を慣れさせる必要があります。

B.ボキャブラリーの不足:自分専用の単語帳を作る

さて、ここまではインプットの最小単位である「音」に注目して解説をしてきました。

そして、その音が構成するのはそれぞれの「語」です。

つまり、音が聞き取れてもその単語や熟語自体を知らなければ、意味のある情報としてインプットされることはありません。

ボキャブラリーが不足する主な要因として、次の3つが挙げられます。

    ボキャブラリー不足の要因

  • 単語自体を知らない
  • 地域による単語の用法の違いを知らない(ガソリン:gasoline(US) / petrol(UK)など)
  • 熟語(句動詞 / イディオム / スラングなど)を知らない

自分専用の単語帳を作って対策する

この記事ではそれぞれについての細かな説明は割愛しますが、ボキャブラリーを増やすために「自分専用の単語帳を作る」ことをおすすめします。

ネイティブの話が聞き取れない、という悩みを持っている方は、裏を返せばその他についてはある程度理解できる英会話中上級者の方のはずです。

つまり、基礎的な英単語はほとんどマスターしているので、新しい教材に手をつけたり、今持っている教材を完璧に覚えたりする必要はないでしょう。

単語を使えないのは、今までに使う場面がなかったから

突然話が変わりますが、球の表面積を求める公式を思い浮かべてください。

正解は4×π×Rの二乗です。(π=円周率、R=半径)

中学生、早い人は小学生の時に習う公式です。

一部の優秀な方を除いてほとんどの方は思い出せない、あるいは思い出すのに時間がかかったものと思います。

なぜでしょうか。理由はとても単純で、習ってから今までに実際に使う場面がなかった、そしてその必要もなかったからです。

ボキャブラリーを効果的に増やしていくためには、実際に自分が聞く、あるいは使う単語や熟語を集中的に覚える必要があります。

ネイティブ英語が聞き取れない原因その2:情報処理の問題

ネイティブ英語が聞き取れない原因その2:情報処理の問題

リスニング中に、

「最初のうちは理解できていたけど途中から理解が追いつかなくなり、どんどん内容が分からなくなっていく」

そういった経験をしたことがある方も多いのではないのでしょうか。

これは前の章で述べたインプットの問題とともに、脳内の処理が追いついていない状態であると考えられます。

その原因は主に、次の2つが挙げられます。

●情報処理不足が発生する原因

A.文法知識の不足
B.単純な処理速度の不足

A.文法知識の不足

次の例文を一度だけ、できれば声に出して読み和訳してみてください。

Not until I talked to him did I know he was homesick.

単語自体は中学生でも分かるものしか使われていませんが、内容をすぐに理解するのは少し難しかったのではないでしょうか。

これは否定語と副詞が文頭に出た形の倒置で、元の文は次のような形になっています。

I did not know he was homesick until I talked to him.
「彼と話して初めて、彼がホームシックになっていることが分かった。」

この文章はあくまで例であり、これが理解できたかどうかはあまり重要ではありません。

また、この記事を読んでいる多くの方は語彙とともに文法知識も充分に身につけていると思われるので、あらたに文法を学び直すよりも多くの英文に触れることで実践的な文法力を強化していくことをおすすめいたします。

B.単純な処理速度の不足

リスニングが苦手な方、特にリーディングの方がリスニングより得意であると感じている方がストレスを感じるのは、次のような理由からではないでしょうか。

リスニングが苦手だと感じてしまう理由

  • 繰り返し音声を聞くことができないから(テストなどで複数回音声が流れる場合を除く)
  • 1つの文を完全に理解する前に、次の文が始まってしまうから

これはつまり、英語を英語の語順で理解する能力が足りていないということです。

2009年に東京大学が発表した「英語におけるリーディングとリスニングの相関関係についての研究」によって、リスニングテスト高得点者はリーディングにおける「読み戻り」が少ないことが明らかになっています。

これを受けて同レベルの英語力を持った人を

  • 速読トレーニングを行うグループ
  • ディクテーションを行うグループ

上記の2つに分けて後日テストを行ったところ、ディクテーションのグループではスコアの差がほぼなかったのに対して、速読訓練を行ったグループの方はスコアが伸びたという結果が報告されています。

このことから、英語を英語の語順のまま理解するという能力を伸ばすためには速読の訓練が有効で、しかも結果的にリスニング力の向上にもつながると考えられます。

速読訓練のメリットとは?

速読訓練のメリットとは?

リスニング力を上げるために速読のトレーニングをするというのは、一見不思議かもしれませんが実際には以下のようなメリットがあります。

リスニング力向上における速読トレーニングのメリット

  • リーディングの場合、知らない単語だけ調べれば良い
    (リスニングの場合、知っている単語でも聞き取れない可能性があり、スクリプトを確認する手間がある。)
  • 単語を暗記しても忘れてしまうのと違い、速読力は一度鍛えれば衰えない、あるいは衰えにくい
  • 速読力を鍛えると、単語の意味を英英辞書で調べたりする時などの学習効率が上がる
  • 学習スピードが上がることで時間の短縮ができ、学習に取り組むハードルが下がる
  • 多くの英文に触れることで単語力・文法力のブラッシュアップにつながる
  • リーディング力が向上する。また、ビジネスにおいてはそれに伴い作業能率も向上する

WPMを意識する

様々なメリットのある速読学習ですが、そのうえで欠かせないのがWPM (Words per Minutes)を意識することです。

WPMとは、Words per Minutesの略で「1分間あたりに読める語数のこと」を指します。

速読トレーニングではこのWPMを180-200程度にすることを目標にしましょう。

リスニングにおいては、話者が1分間に話す語数になります。

WPMの基準

以下のWPMの基準をご覧ください。

これらはいずれも実測値ではないため参考程度にとどめてください。

150 TOEICリーディングテストの文章を全て読み、解答するのに最低限必要
155 スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチ
160-180 TOEICリスニングテスト
180-220 ネイティブのナチュラルな会話、CNNやABCなど海外ニュース
300 ネイティブ成人の平均的な読解スピード

WPMが低いと情報処理が追いつかない

ネイティブの英語が聞き取れないというお悩みをお持ちの読者の方は、おそらくリーディングのWPMが150-200程度だと考えられます。

では、リーディングのWPMが170の人がWPM200の音声を聞くとどうなるでしょうか。

自分の理解の速度を超えて音声が聞こえてくるわけですから、当然情報処理のスピードが追いつきません。

加えてリスニングの場合は、話された「音」を意味のある「語」として認識する必要もあるため実際の情報処理スピードはさらに落ちるでしょう。

速読学習の教材の選び方

読んで分からないものを聞いても分からないのは当然のことです。

したがって、まずは英語を英語のまま理解するスピードを上げて、その後に音に慣れていく、また語彙・文法力を強化していくというのが速読をおすすめする根拠です。

この章では教材の選び方について解説し、次の章で具体的な速読の学習法について紹介いたします。

一読して分の内容がわかるものを選ぶ

結論から言うと、教材の選び方は自分のレベルに合ったものを選ぶしかありません。

なぜなら読解スピードは語彙力、文法力によってかなりの程度左右されるため、この教材をやっておけば間違いないということがないからです。

ただし、その選び方には注意しなければならない点があるのでそちらについて解説いたします。

それは現状のレベルよりも下のレベルの教材を選ぶことです。つまり、一読して文の内容が分かることです。

なぜなら単語が分からなかったり、複雑な構文で意味が読み取れなかったりすると速読のトレーニングにならないからです。

そのためTOEICやTOEFLなど試験のスコアが出るものではなく、英検やケンブリッジ英検などレベルごとに試験が行われるものを目安にすると分かりやすいでしょう。

例えば、英検準1級レベルの方なら英検2級用の教材を、2級なら準2級用のものを教材として使用することです。

そうすることで、上に書いたように単語が難しくて分からないということが起こりにくく、文章を滞りなく読むことができます。

そして、結果的にリーディングのスピードアップに専念できます。

その他の教材を選ぶポイント

さらに好ましい教材の要素としては、次のようなポイントが挙げられます。

●教材を選ぶポイント

  • 文章に対して、内容チェックの設問がついているもの
  • 解答などに和訳がついているもの
  • リスニング音声がついているもの

これは、いくら文章を速く読めても内容が分かっていなければ意味がないからです。

設問の正誤や和訳文章を読んで、自分の理解で合っているかを確認し、間違っていればどの部分を理解できていなかったかを詳しく見る必要があります。

また、リスニング音声のあるものであれば、通勤・通学時にリスニング教材として使用することができるので音に慣れるトレーニングにもなりますし、加えて、速読の次のステップでもあるオーバーラッピングやシャドウイングに使用することもできます。

これらの要素を備えているのであれば、例文の豊富な単語帳など手元にある教材を活用すると良いでしょう。

万が一、今持っているレベルの高い教材を使いたいという場合は、一度精読をして単語や文法的な事項をクリアにしてから速読訓練に使いましょう。

具体的な速読学習法について

具体的な速読学習法について

英文処理能力を高めるためには、レベルを落とした教材を使用して、リーディングにおけるWPMを180-200程度にすることを目標に速読トレーニングを行いましょう。

この章ではその具体的な方法を解説いたします。

まず、速読するために必要なことは、文章を読んで一度で理解する、いわゆる英語脳を養うことです。

この英語脳を鍛えるためには、次の2つが不可欠です。

●英語脳を鍛えるポイント

  • 読み戻りをしないこと
  • 和訳しないこと

読み戻りを防ぐ有名な方法として「スラッシュリーディング」というものがあります。

スラッシュリーディングとは、意味のまとまりごとにスラッシュ(/)を入れることで英文を頭から理解していく方法です。

しかし、今回は速読のトレーニング法として音読をおすすめいたします。

なぜなら、黙読していると無意識に読み戻りをしてしまいますが、音読をすることで自分が意識的に読み戻りしない限り前に戻って読むことを防げるからです。

加えて、実際に自分の口で発声・発音することに慣れることで、次のステップであるオーバーラッピングやシャドウイングにスムーズに移行できるというメリットもあります。

1.音読

音読をする際には具体的に次の2つのことを行ってください。

●音読で意識すべきこと

A.WPMを意識すること
B.重要な部分を強調すること

なお、環境的にどうしても音読ができないという方は指でなぞりながら文章を読むと良いでしょう。

指を一定のスピードで動かし続けることで、前に戻って読むことを防げます。

A.WPMを意識すること

音読に使用する教材を決めたら、まずはそれを使って今の自分がどれぐらいのペースで読むことができるか計測しましょう。

WPMは1分あたりに読むことのできる量ですが、実際に計測する際には1分でどれぐらいの量を読めるかではなく、文章を読み終えるのにかかった時間で語数を割ってWPMを求めてください。

この時は黙読で構いません。

自分のレベルが分かったら目標のWPMを決め、そのペースで文章を読めるようにトレーニングしていきます。

最終的に180以上になるまで根気よく続けましょう。

B.重要な部分を強調すること

次に、音読をする際は、文の中で重要な部分を強調して読んでください。

英語のスピーキングにおいては発音とともに、「ストレス」つまりどこを強調するかも非常に重要です。

ストレスを意識することによって、重要ではない部分を流して読むようになることができます。

このような読み方ができるようになると、リスニングの際にも強調された部分を核にして、文意を汲み取ることができるようになります。

つまり、重要な箇所を意識して音読することでリーディングのスキルはもちろん、スピーキングとリスニングの能力も同時に伸ばすことができるのです。

しかし、重要な部分を強調して読むためには文章の内容を予測して読む能力が欠かせません。

そのためには以下の2つを心がけてみてください。

●文章の内容を予測するためのポイント

①動詞の意味・語法を意識すること
②ディスコースマーカーを意識すること

①動詞の意味・語法を意識すること

英語における動詞は通常、名詞の後に来るため比較的文章の序盤に出てくることが多いです。

そして、その動詞の意味と語法を意識して読むと文の続きを予測することができます。

例えば、“She gave it to ( ).”という文があればtoの後はitを上げた人が来るはずなので、「誰に上げたんだろう」と疑問を持ちながら読むことができます。

つまり”gave it”が後の文の内容をある程度推測できるようにしてくれるということです。

②ディスコースマーカーを意識する

読者の方の中には既にこれを実践している方は多いかもしれません。

ディスコースマーカー、あるいは論理マーカーとは日本語における接続詞とほぼ同じ効果を持っています。

“Because”と書いてあれば、その後の文の内容は理由を述べているはずなので、こちらも動詞と同じように続く文の内容を推測するのに役立ちます。

ディスコースマーカーにはBecause, Although, Additionallyなど様々ありますが、これらを効果的に使えるようになるとライティング力の向上にもつながります。

2.オーバーラッピング

音読に使用した教材に音声データがあれば、実際にどこを強調して話しているかチェックをしましょう。

強調点をチェックすることで英文の構造を体感として理解することができ、リスニング力が飛躍的に向上します。

そして、音読のトレーニングによって黙読のWPMが180-200程度まで上がったら、次のステップであるオーバーラッピングに移りましょう。

オーバーラッピングとは音声を聞きながら文章を読むことです。

オーバーラッピングも音読と同様、英語脳を鍛える目的がありますが、同時に発音矯正にも効果があります。

音読に使用した教材に音声データがない場合は、TEDを利用することをおすすめいたします。

なぜならTEDには、次の3つの機能が備わっているからです。

  • スクリプト
  • 字幕
  • 倍速再生

2020年6月現在ではスマートフォンアプリにスクリプト機能は備わっていませんが、ブラウザであれば使用することができます。

3.シャドウイング

オーバーラッピングに慣れてきたら、最後のステップであるシャドウイングをしましょう。

シャドウイングとは、原稿を見ずに流れてくる音声をそのまま真似して話すことです。

視覚情報がないためオーバーラッピングよりも負荷が高く、はじめのうちは苦労するかもしれません。

音読やオーバーラッピングで使用した文章をあらためてシャドウイングすると、文章の内容も構造も理解している状態であるため自分がどこを聞き取れていないのかをチェックするのに非常に有効です。

慣れてきたら、初見の文章でシャドウイングに挑戦してみてください。

まとめ

ネイティブの英語が聞き取れないという方の悩みを解決するために、速読トレーニングの方法を紹介いたしました。

英語が聞き取れない原因

  1. インプットの問題
  2. 情報処理の問題

という2つの観点から解説し、今回は2つ目の処理能力を向上すること、つまり英語脳を養うことにフォーカスしました。

トレーニングの方法としては

  • 音読
  • オーバーラッピング
  • シャドウイング

を紹介いたしました。

具体的には、

  1. WPMを意識する
  2. 重要な部分を強調する

そして、文章の内容を予測しながら読むため

①動詞の意味・語法を意識すること
②ディスコースマーカーを意識すること

を心がけてみてください。