TOEICを英検に換算できる?試験内容と評価基準の違いについても解説

TOEICを英検に換算できる?試験内容と評価基準の違いについても解説

TOEICと英検は、どちらも英語力を測定する代表的な試験です。

「TOEIC◯◯点って英検だと何級くらい?」「どっちを受ければいいの?」と迷ったことがある人も多いのではないでしょうか。

この記事では、両試験の特徴や評価の考え方をもとに、換算表の見方や注意点、目的に合った試験の選び方までわかりやすく解説します。

TOEICのスコアを英検に換算するのは難しい

TOEICのスコアを英検に換算するのは難しい

TOEICのスコアと英検の級を並べて、「TOEIC○○点は英検何級?」と聞かれることはよくあります。

ネットを検索してもこのような比較を行う記事が多いことがわかりますが、実はこの2つの試験は、仕組みや評価の前提が大きく異なっています。そのため、単純に換算することは容易ではありません

TOEICは、受験者全員が同じ問題を解き、その正答数に応じて0〜990点のスコアで評価する試験です。

数値化された結果で自分の実力や伸びを測ることができるのが特徴で、「あと何点アップすれば目標に届く」といった目安も明確です。スコア分布は毎回変動し、全体のなかで自分がどの位置にいるのかを相対的に把握する用途に向いています。

一方、英検は1級から5級まで分かれており、受ける級ごとに問題の内容や難易度が変わります。評価も「合格」「不合格」の2択で、一定の基準をクリアすれば資格として残ります。

たとえば、2級合格者のなかにも実力差があるのは当然ですが、英検は「到達ラインを超えたかどうか」という絶対評価の色が濃い試験です。

この違いから、TOEICのスコアと英検の級を、まるで定規で測るように完全に一致させるのは不可能と言ってもよいでしょう。

TOEICも英検も、それぞれに到達できる上限があります。TOEICはスコア型で、0点から990点まで5点刻みで評価され、満点を取ればそれ以上はありません。英検も同様に、1級以上の級はなく、いずれも試験の範囲で測定できる上限が存在します。

また、試験の設計思想や出題範囲も大きく異なるため、「この点数だからこの級と同じ」とは一概に言えないのです。

もちろん、おおまかな目安として両者の対応表が示されることはありますが、これはあくまで学習や進路選択の参考情報にすぎないことを理解しておきましょう。

スコアや級の数字だけにとらわれず、両方の試験の成り立ちや評価軸を理解したうえで、自分に必要な力がどこにあるかを見極めることが大切です。

TOEICスコアと英検級の換算表

TOEICスコアと英検級の換算表

TOEICと英検は評価方法や出題内容が大きく異なるため、両者をぴったり対応させることはできませんが、公式機関が公表する情報をもとに、おおよその目安となる換算表は作成可能です。

以下に、TOEICスコア、英検各級、CEFR(国際基準)、それに、英検独自のCSEスコアを一覧できる形でまとめてみました。

CEFRTOEIC英検CSEスコア
(合格基準/満点)
到達度イメージ
C1945~9901級2630/3400専門的な話題で、推論しつつ複雑な内容も論理的に
主張・根拠を明確に伝達できる
B2785~944準1級2304/3000社会的な話題で、複雑な展開も理解し
主張や根拠を明確にしながら詳細に伝える
B1550~7842級1980/2600社会的な話題について、概要・要点・詳細を理解し
展開を考えつつ詳細に伝えることができる
A2225~549準2級プラス1829/2500身近な社会的な話題の概要・要点・詳細を理解し
多様な語句で詳細に考えや情報を伝えることができる
A2225~549準2級1728/2400日常的な話題の概要を捉え、情報や自身の考えを
基本的な語句で伝えられる
A1120~2243級1456/2200日常的な話題について、短い話や文章の要点を捉え
理由を含めて自分の考えや感想を伝えられる
4級622/1000日常的な話題の概要を捉え、初歩的な語句を用いて
考えや感想を簡単に伝えることができる
5級419/850日常的な話題の必要な情報を得たり
初歩的な語句で自分の関心を伝えることができる

英検では、合否判定だけでなく「CSE(Common Scale for English)」と呼ばれる独自のスコアシステムが導入されています。

これは4技能(読む・聞く・書く・話す)それぞれを数値化(例:1級は3400満点)し、英語力の伸びや技能ごとの得意・不得意を可視化したシステムです。各級ごとに合格基準となるCSEスコアが設定されており、たとえば準1級なら「4技能合計2304点以上」が合格ラインとなります。

CSEスコアは国際指標であるCEFRにも対応して設計されており、英検の公式サイトでは、級やスコアごとにCEFRのおおよその対応レベルが確認できます。

ただし、CSEは英検独自のシステムで、TOEICなど他試験のスコアに直接換算できません。英検の受験者が「今どの技能が強くて、あとどれくらいで合格か」を把握する目的で使うための指標です。

なお、上の換算表は英語力のおおまかな目安として活用できますが、同じスコア帯でも受験者の得意分野や試験形式によって実力差が出ることは珍しくありません。たとえばTOEICで高得点を取った人が、必ずしも英検準1級や1級に簡単に合格できるとは限らない、というのが実情です。

こうした点を踏まえつつ、自分の目的に合った試験を選ぶための参考資料として、この表を活用してください。

TOEICを英検に換算する時に知っておきたい試験の違い

TOEICを英検に換算する時に知っておきたい試験の違い

TOEICと英検は、どちらも英語力を測る試験としてよく知られていますが、そもそもの目的や評価の方法には大きな違いがあります。

まずは、それぞれの試験がどんな場面で使われ、どんな力を測っているのかを整理しておきましょう。

TOEICは英語の運用力を測るテスト

TOEICは、「英語で仕事ができるか」という実践力を測るためのテストです。

開発を担当したのはアメリカの非営利団体・ETS(Educational Testing Service)ですが、日本の企業社会のニーズに応える形で始まりました。

1979年に日本で初めて実施されて以来、TOEICはさまざまなシーンで幅広く使われています。

就職や昇進、グローバル人材の育成や、社内の語学基準を決める時の評価指標として、実務での英語力がどのくらいかを客観的に知るツールとして活用されている試験です。

試験の基本は「TOEIC Listening & Reading Test(L&R)」です。全問マークシート方式で、リスニングとリーディングの2技能が対象になっています。

ちなみに、スピーキングやライティングを測る「TOEIC Speaking & Writing Tests(S&W)」もありますが、L&Rほど普及しているわけではありません。この記事でも特に断りがない限り、「TOEIC=L&R」と考えてください。

TOEICの大きな特徴は、一律スコア制です。受験者全員が同じ問題を解き、正解数に応じて5点刻みで0〜990点までスコアがつきます。

今の自分の実力を数値で把握できるため、「あと何点上げたい」といった目標管理や、学習の進捗チェックにも使いやすい仕組みです。合格・不合格ではなく、細かい点数での評価になるのが英検との一番の違いと言えるでしょう。

実際、企業のなかには「TOEIC◯◯点以上が昇進の条件」としているところもありますし、海外赴任やグローバル部署への配属でスコアが求められるケースも少なくありません。

TOEICで出題される内容も、おもにビジネスシーンに関する内容です。

会議やプレゼン、電話のやり取り、求人票や広告、社内メールといった、実際の仕事で出会う場面が中心になっています。語彙やフレーズも定型的なものが多く、英文をどれだけ効率よく処理できるかが問われる構成です。

このようにTOEICは、広く一般的な語学力と言うより、「仕事の現場で本当に使えるか」という運用力を軸にしたテストです。よって、スコアという数字でその力を測るのが最大の特徴と言えるでしょう。

英検は発信力も問われる段階別資格試験

英検(実用英語技能検定)は、公益財団法人日本英語検定協会が主催している、日本で最も歴史のある英語資格試験です。

1級から5級まで段階が細かく分かれており、受験者のレベルに応じてチャレンジできる仕組みになっています。

文部科学省の後援もあり、小学生から高校生、大学生、英語の先生を目指す人まで、幅広い層が受けています。

英検の最大の特徴は、英語の「読む・聞く・書く・話す」の4技能をバランスよく評価することです。

3級以上は一次試験(筆記・リスニング・ライティング)と二次試験(スピーキング面接)に分かれ、級が上がるほど主張や意見の展開力、論理の組み立て方といった発信力が重要になってきます。

1級や準1級では、抽象的で社会性のあるテーマについて、自分の立場や考えを根拠とともに伝えられるかどうかがポイントになります。

評価は合格・不合格で決まる合否制です。

一定の基準点を超えれば合格で、合格すればその資格はずっと有効です。このため、入試の優遇や単位認定、教員採用試験の英語力証明など、おもに教育現場で使われることが多い資格になっています。

また、英検は各級ごとに問題構成が工夫されていて、無理なくステップアップできるのも特徴です。

2016年度からは、5級や4級でも録音形式のスピーキングテストが任意で受けられるようになりました。英語を始めたばかりの人でも取り組みやすい試験として受験者が増えています。

このように英検は、英語を理解する力と自分の考えを伝える力の両方を、段階的に身につけていける資格試験です。

TOEICの出題数・時間・出題傾向・語彙レベルは?

TOEICは、リスニングとリーディングの2つのセクションで構成されています。

試験時間は合計2時間(リスニング45分、リーディング75分)で、問題数はそれぞれ100問ずつ、合計200問というボリュームです。全問マークシート方式で、問題文・設問・選択肢のすべてが英語で書かれています。

リスニングセクションでは、日常会話や職場でのやり取りを題材にした短い会話、説明、アナウンスなどが出題されます。実際のビジネスシーンや公共の場面を想定した内容が多いです。

会話の流れや細かな情報に注意を払いながら、適切な選択肢を選ぶ力が求められます。

リーディングセクションでは、Eメール、案内文、広告、社内通知、業務マニュアルなど、実務で使われる書類が多く出題されます。

複数の文書を比較したり、必要な情報を短時間で探し出したりする問題も含まれており、「情報をいかに効率よく処理できるか」が重視されていると言えるでしょう。

TOEICの特徴は、その出題傾向にも表れています。会議の議事録や製品説明、求人広告、注文確認メールなど、実際にビジネス現場で遭遇する定型的なやりとりが中心です。

出題される語彙も、中級から準上級レベルの日常語・ビジネス語が中心で、「reimbursement(経費精算)」や「reschedule(予定変更)」といった、業務で使われる表現が頻繁に登場します。

修辞的に高度な表現や学術用語はあまり出題されず、むしろ「実際の現場でどれだけ素早く必要な情報をキャッチできるか」を問う内容になっています。

また、TOEICでは設問ごとに素早く答えを出していく処理力が重要です。

短時間で次々と英文を聞き、または読み、情報の要点をつかむ力が求められます。そのため、試験対策でも「問題形式に慣れる」「パターンを把握しておく」といった実践的なアプローチが欠かせません。

こうした構成や出題傾向からも、TOEICは「職場や実社会で役立つ英語を、数値で見える形にして評価する試験」と言えます。

ビジネス英語の即応力や情報処理の速さが強く意識されているのが、他の資格試験にはない大きな特徴です。

英検の出題数・時間・出題傾向・語彙レベルは?

英検は1級から5級まで細かくレベル分けされており、受験する級によって試験の内容や時間が大きく異なります。各級の試験時間は以下の表のとおりです。

筆記リスニング二次試験
1級100分約35分英語での面接 約10分
準1級90分約30分英語での面接 約8分
2級85分約25分英語での面接 約7分
準2級プラス85分約25分英語での面接 約7分
準2級80分約25分英語での面接 約6分
3級65分約25分英語での面接 約5分
4級35分約30分スピーキングテスト 約4分(任意)
5級25分約25分スピーキングテスト 約3分(任意)

1級や準1級といった上位級では、筆記試験とライティングで90分を超える時間が設定されており、難易度の高い長文読解やエッセイ問題にもじっくり取り組む構成です。

リスニングも30分前後と長めで、実際の講義やインタビューに近いナチュラルな会話や意見陳述などが多く出題されます。

二次試験の面接も、1級では約10分としっかり時間が取られており、自分の意見を根拠を持って展開する発信力や論理構成力が試されます。

準2級や3級でも、筆記パートに1時間以上の試験時間が設けられており、基礎的な読解力・リスニング力だけでなく、英語でやりとりできる力が必要です。

また、3級以上は必ず面接があり、自分の考えを簡潔に伝える力や、質疑応答への対応力も評価対象となります。

一方、4級・5級は、おもに中学生などの初学者を対象にしているため、筆記やリスニングもコンパクトな設計です。スピーキングテストは希望者のみ受験できる形式で、その結果や受験の有無は合否に関係ありません

このように、英検は受験者の年齢や学習段階に合わせて、試験時間や内容を段階的に設定しているのが特徴です。

どの級を選んでも、「読む・聞く・書く・話す」の4技能をバランスよく伸ばせる設計になっています。

TOEICと英検どちらを受ける?目的別の選び方

TOEICと英検どちらを受ける?目的別の選び方

ここまで、TOEICと英検の違いや換算表の見方、その限界について詳しく見てきました。

実際にどちらの試験を選ぶべきかは、受験する目的や、どのような場面で英語力を証明したいかによって大きく変わります。

このパートでは、進学、就職、留学、また、英語学習の段階ごとに、TOEICと英検のどちらがより有効かを見ていきます。

進学や学校での優遇・単位認定を重視するなら英検

英検は、進学や学校現場での優遇措置、単位認定、資格申請などに幅広く活用されている試験です。

たとえば、高校や大学の入試で英検の級を持っていると、加点や英語試験の免除などの優遇措置が受けられるケースが年々増えています。

また、大学在学中の単位認定や、教員採用試験、推薦入試の出願要件など、教育現場との親和性が高いのも大きな強みです。

英検は1級から5級までの段階制試験です。自分の現在の実力に合った級から無理なく挑戦できるのも、TOEICにはない英検のメリットと言えるでしょう。

就職・転職・社内評価ならTOEIC

就職や転職、昇進など、ビジネスで英語力を証明するなら、TOEICスコアの活用が圧倒的に主流です。

多くの企業や団体が、社員の昇進や海外赴任の条件、採用選考や人材評価の基準としてTOEICスコアを指定しています。

スコアは0点から990点まで5点刻みで表示され、全国どこでも一律の評価軸になるため、実力を数字で明確にアピールしやすいのが利点です。

また、TOEICは毎月のように実施されているため、受験のタイミングを調整しやすいのもメリットです。就職活動や昇進試験など、必要な時期に合わせて受験できます。

海外留学など国際的な証明として使いたいケース

TOEICや英検は日本国内での知名度が高い資格ですが、海外留学や国際的な資格申請となると、どちらを出せばいいのでしょうか。

実は、多くの欧米の大学や専門機関では、TOEFLやIELTSのスコアが出願条件として指定されています。TOEICや英検のスコアだけで受験できるケースは、まだまだ例外的と言わざるをえません

ただ、CEFR(国際的な英語力指標)への対応が進んだこともあり、最近は英検の一定の級(準1級以上)を持っていれば、一部の大学や留学プログラムでは英語力の証明として認められるケースが増えてきました。

一方、TOEICについては、国内の企業評価では威力を発揮しますが、海外進学や留学でのアピールには向いていないと言ってよいでしょう。

いずれにせよ、留学を目指すなら、希望する進学先や応募先がどんな資格を求めているか、公式サイトなどで確認しておいてください。

どちらかに決められない場合は?

どちらか一方に決めきれない場合、可能であれば、TOEICと英検の両方を受験しておくことをおすすめします。

というのも、両試験は出題される英語の内容や問われる力が大きく異なるため、それぞれの対策を通じて偏りのない英語力が身につくからです。

たとえば、TOEICはビジネスシーンで頻繁に出てくる表現や定型文の処理を中心に、スピーディーな処理能力が求められます。

英検は級が上がるにつれて、長文や抽象的なトピック、意見表明、さらには面接での瞬発力や思考力が試されるため、別の意味での速読力や対応力が不可欠です。

どちらか一方の試験だけに慣れてしまうと、その形式や出題範囲のなかだけで通用する力に偏ってしまうおそれがあります。

その点、両方の試験に取り組めば、それぞれがカバーしきれない部分も含め、実際に役立つ総合的な英語力を養うことができるでしょう。

TOEICスコアと英検の級の換算のまとめ

両試験を比較してみると、TOEICと英検はどちらも英語力を測る指標として広く知られていますが、その成り立ちや評価の視点、出題される内容は大きく異なります。

スコアや級を単純に換算することはできないものの、各試験の性質を知ることで、自分にとって本当に必要な英語力や目標を考えるきっかけになるでしょう。

試験の合格や高得点はあくまで通過点にすぎません。

「英語で何をしたいのか」という視点を忘れず、学習過程そのものを納得いくものにしていきましょう。