
これまで一生懸命英語を勉強してきたけど、どうしてもリスニングが苦手、または、日常会話特有のフランクな表現に苦手意識がある。
今回はそんな悩みを抱えている方に、特にリスニング力を上げる秘訣を紹介します。
英語リスニングが苦手な理由

おそらくこの記事を読んでいる方の多くは、英語リスニングが苦手という悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
それは一方で、分かりやすく話される英語や、話題の決まっている特定のシチュエーションではコミュニケーショに問題がないと感じている、ということでもあるのではないかと思います。
これら踏まえて、リスニングの際に生じる問題を分析すると、主な原因に以下の2つのことが挙げられます。
- 音が聞き取れない
- 言葉が分からない
この章ではまず、この2つの原因について詳細に解説します。
音が聞き取れない
英語の音声を聞いてから、スクリプトを確認した時に「こんな簡単な英語を話していたのか」と感じたことがある方がいるかもしれません。
例えば、”in that case”というフレーズは、場合によっては”ina(t) case”のように聞こえるかもしれません。
このような音の変化は、専門用語ではリエゾン(連結)やリダクション(脱落)と言いますが、日本語では体育館が「たいくかん」と発音されるようなものです。
したがって、リスニング力を上達させるにはこのリエゾンやリダクションに慣れなければいけません。
加えて、速いスピードで話される英語に理解が追いつかないという問題もあります。
人間の脳は音声を聞いた時、音声の聞き取りと意味の理解という2つの動作を瞬時に行っています。
話すスピードが速いと、音声の聞き取りの負荷が高くなるため、その分話の内容を理解するのが難しくなります。
反対に、意味の理解に時間がかかってしまうと、結果として音声の聞き取りが難しくなります。
つまり話のスピードが速いことが、音声の聞き取りと意味の理解の両方を妨げる要因になっています。
意味を理解するスピードを上げるためには、英語を頭の中で日本語に置き換えずに、英語を英語のまま理解する必要があります。
言葉が分からない
次に、リスニングできない理由として、そもそも使われている言葉の意味が理解できないことが挙げられます。
率直に言えば、ほとんどの場合、英語を理解するための語彙が足りていません。
「普段の英会話で困ることはないけれど、海外ドラマを見ていると内容が理解できないことがある。」
このような状況は、ドラマで使われている言い回しに馴染みがないために起きます。
しかし、単語やフレーズについては、一般的な教材を使用してカバーすることができない部分があります。
それは、分からない単語が固有名詞の場合です。
英語でニュースを聞く際、それを知らなければ理解に支障をきたすでしょう。
英語の固有名詞については、実際にその土地に住むか、その土地の文化や宗教などの背景を意識的に学んだりするしかありません。
また、英語の日常会話においては熟語やスラングがよく使われます。一般的な英語学習過程において触れる機会が少ないため、習得に時間がかかってしまいます。
英語リスニング力を上げるヒントは「大量のインプット」

この章では、リスニング力を得るための学習方法を紹介します。
簡潔に言えば、語彙を増やして英語リスニングに慣れることです。
これについては、「大量のインプット」が共通した鍵になります。
その第二言語習得の諸研究から、大量のインプットが外国語学習に効果があるとされています。
その効果は、主に以下の3つがあります。
- インプットをすることで、アウトプットできる量が増える。
- 正確な文章に触れることで、自分の間違いに気付ける。
- 予測文法力(予測力)が身に付く。
それぞれの詳細について見ていきます。
インプットをすることで、アウトプットできる量が増える
言葉にすると当然のように思えますが、アウトプットをするためにはインプットが不可欠です。
言語学習におけるインプットからアウトプットの流れを噛み砕いて解説すると、知る→理解する→覚える→身に付く(=自発的に使える)、といういくつかのプロセスを踏みます。
また、それぞれのプロセスにおける深度が、次のプロセスの深度にも影響を与えます。
分かりやすく言うと、「深く」理解すると、「深く」記憶に定着するということです。
例えば、「複製する」という意味の”replicate”という英単語を覚える時、「レプリカ品」の「レプリカ」の意味だと理解できれば、何回も口に出したり、紙に書いたりする努力をしなくても、すぐに記憶に定着するはずです。
このことからアウトプット可能な知識を増やすためには、
- インプットの量
- 各プロセスの効果
という2つの要素を、できる限り最大化する必要があります。
このうち、1つ目の要素であるインプット量の最大化が、「大量のインプット」ということになります。
さて、ここまで大量のインプットによって、アウトプット可能な知識を増やせることを見てきました。
では、アウトプットできる量が増えることは、リスニング力にどのような効果をもたらすのでしょうか。
それは、簡潔に言えば「自分で話せることは、聞いたことが理解できる」ようになることです。
自分が深く理解している知識や情報は、音声処理の負荷が低くなります。
音声処理の負荷が低くなれば、その分、意味を理解するために割けるキャパシティが増えます。
さらに、英語を英語のまま理解することに次第に慣れていくと、結果として意味を理解する処理スピードが向上します。
したがって、大量のインプットによって、英語の音声処理・意味理解のいずれに対しても効果が見込めるということになります。
正確な文章に触れることで、自分の間違いに気付ける
インプットの2つ目の効果として、自分が話す英語の用法の間違い気付けるということが挙げられます。
これは、実際には大量のインプットと言うよりも「正確」なインプットによる効果ですが、正確なインプットをたくさん行うことでその効果の恩恵をより多く得られます。
“Enjoy”の語法に関する簡単な例を挙げると、
I enjoyed to watch a movie yesterday.
と今まで言っていた人が
I want to travel because I enjoy meeting people and seeing new places.
(人に会ったり、新しい場所に行ったりすることが好きなので旅行に行きたいです。)
という文に触れることで、「enjoyの後はing型が来るのが正しい」ということに気付くことができます。
さらに、音声教材であれば、正確な発音やアクセントを学ぶことができます。
予測力が身に付く
最後に、大量のインプットをする効果として予測力が身に付くことが挙げられます。
予測力とは、言い換えるならば「慣れ」と言うこともできます。
例えば、コンビニに入った時に「しゃせー」と言われたら、ほとんどの人はそれを「いらっしゃいませ」という意味だと受け取るでしょう。
また、「彼とは全く話したことがない」と言う時、聞き手は「全く」という言葉に反応して「~ない」という言葉を連想します。
第二言語習得の分野では、「全く~ない」の例のように、文法や語法によって文の構造を予測する能力を特に「予測文法力」と言います。
英語にも様々な文法規則がありますが、それらを自分自身が使うことのできる知識として身に付つけることで予測文法力が身に付きます。
話し手がこれから話す内容や文構造を予測することができるようになると、結果としてリスニング力が向上します。
具体的な英語リスニングの勉強法

具体的にどのような学習法であれば、効果的に大量のインプットをすることができるのでしょうか。
今回紹介する方法は以下の3つです。
- オーバーラッピング(Overlapping)
- レペティション(Repetition)
- シャドーイング(Shadowing)
それぞれの具体的なやり方、そして注意点や効果についても解説します。
オーバーラッピング
オーバーラッピングとは、音声に合わせ自分も文章を音読する方法です。
オーバーラップを直訳すると「上から、被せる」という意味になるので、「被せ読み」とでも言えるでしょうか。
動画であれば、役者やスピーチをしている人が話すのと同時に字幕やスクリプトを音読すること、音楽であれば、歌詞を見ながら歌うことです。
レペティション
レペティションとは、Repeatの名詞型であることから分かるように「繰り返す」ことです。
オーバーラッピングとの違いは文章を見ないことです。
また、音声を1文ずつ止めて復唱する点も異なります。
スピーカーが1文読んだら音声を停止して、その内容を理解したうえで、同じ文を自分も声に出します。
必ずしも1文である必要はなく、文章の難易度によっては1文以下でもそれ以上でも構いません。
シャドーイング
シャドーイングは、スクリプトを見ずにオーバーラッピングと同じことをします。
自分が歩けば影が付いてくるように、スピーカーの後に続いて同じ文章を声に出します。
音声を処理し、意味を理解する、そして実際に自分自身も発声しますので、負荷が相当高い作業を行うことになります。
しかし、シャドーイングが難なくこなせるようになる頃には、リスニング力も飛躍的に向上しているはずです。
それぞれの注意点や効果
学習する際の負荷は、オーバーラッピング<レペティション<シャドーイングの順番に高くなりますが、主となる効果は同じです。
その効果や教材を選ぶ際の注意点などについて解説します。
教材の選び方
まず、使用する教材は音声付きが必須です。
それに加えて、内容を参照するためのスクリプト、ドラマなどの場合は英語字幕が見られるものが求められます。
TEDやNetflixの海外ドラマなどがおすすめですが、自分が楽しみながら続けられるものであれば何でも構いません。
なお、TEDについてはスマートフォン版のアプリではスクリプトを見られないので、ブラウザで視聴する必要があります。
(※アプリ版でも、字幕を見ることはできます。)
視覚的な情報がある方が記憶に定着しやすくはありますが、音楽を聞くのが好きな方であれば、洋楽を教材にするのも良いでしょう。
ただし音楽の場合は、詩的な表現が含まれていたり、省略が多かったりするので注意が必要です。


スクリプトや字幕が必要な理由
前の章で見たように、理解度が深いほど記憶に定着しやすく、単語や文法的知識の習得が早くなります。
したがって、分からない部分があればそのままにせずに、なんと言っているのか、あるいは言っていることの意味を理解して学習を進めていく方が効果的です。
例えば、全く意味の分からない中国語のニュースを聞き続けていても、中国語を話せるようにはなりません。
「なんとなく分かる」ではなく、しっかりと意味を理解することが重要です。
見込める効果
それぞれの学習法で見込める効果には、
- アウトプットできる量を増やすことで、リスニング力が上がる
- 正確な英文に触れることで、自分の間違った用法に気付くことができる
- 予測力が身に付くことで、リスニング力が上がる
があります。
さらに、音読をすることでスピーキング力、特に発音における能力向上が期待できます。
一方で、通勤・通学時の電車やバスの車内など、声に出して練習することが難しい場合は、頭の中で復唱するだけでもリスニング力の向上に繋がります。
特にレペティションは、文章の内容を理解し、自分で再度組み立てる必要があるので、声に出さなくてもインプットとアウトプット両方の練習になります。
効果的に英語リスニングを上達させる勉強法

英語リスニングは正しい方法で学習を続ければ、誰でも確実に力を伸ばせます。
しかし、自己流でやみくもに聞き流すだけではなかなか上達しないことも多いです。
ここでは初心者でも今日から実践できる、効果的な英語リスニングの勉強法を4つ紹介します。
習慣化のコツやおすすめの教材選びなど、ポイントを押さえて効率的に耳を鍛えましょう。
英語リスニングの習慣化
英語リスニングは短期集中よりも、毎日少しずつ続けることが上達のカギです。
中学生や高校生でも1日10分のスキマ時間を活用するだけで十分効果があります。
最初から長時間やろうとすると挫折しやすいため、無理なく続けられる時間から始めましょう。
毎日の習慣にすることで耳が徐々に英語の音に慣れ、単語の聞き取りやフレーズの理解度も自然に高まります。
学校教材だけでなく、好きな音声や動画を取り入れるのもおすすめです。
速度調整機能を活用する
最近の英語リスニング教材や動画には、再生速度を調整できる機能が付いているものが増えています。
英語初心者などスピードに慣れていないうちは、通常よりも0.7〜0.8倍に落として聞き取れる範囲を増やしましょう。
慣れてきたら徐々に速度を上げることで、自然なスピードの英語にも耳がついていくようになります。逆に理解度を試したいときは、あえて1.2倍など速めて挑戦するのもおすすめです。
速度調整を上手に使えば、自分のレベルに合わせて効率的に英語リスニング力を鍛えることができます。
レベルに合った教材
自分のレベルに合ったリスニング教材を選ぶことは、英語リスニング上達の基本です。
難しすぎる教材は内容が理解できずに挫折の原因になり、逆に簡単すぎると成長を感じにくくなります。
中学生や高校生の場合、学校指定の教材だけでは物足りないこともあるため、自分の理解度に合わせて市販のリスニング教材を取り入れるのもおすすめです。
TOEICや英検などのスコアを目安に、自分が8割程度理解できる素材を選ぶと、適度な負荷をかけながら続けられます。
また、教材を一度決めたら繰り返し聞くことが大切です。内容をしっかり理解できるまで繰り返すことで、単語力だけでなく文脈を捉える力も身につきます。
わからない単語は都度調べる
リスニング中に聞き取れない単語を「なんとなく」で流してしまうのはもったいない習慣です。
わからない単語やフレーズは必ず都度メモして意味を調べ、発音も一緒に確認しましょう。
一度覚えた単語でも、音声で聞き取れないことは多いので「意味+発音+文脈」で覚え直すことがポイントです。この積み重ねがリスニングの精度を大きく上げてくれます。
市販の教材やアプリを活用しながら、こまめに調べて実践力をアップさせましょう。
英語リスニングの間違った勉強法

英語リスニングを独学で始めるとき、効果がありそうに見えて実は初心者には向いていない勉強法を選んでしまうことがあります。
ここでは、英語リスニングの上達を遠回りしてしまう「やりがちな間違った勉強法」を紹介します。
音楽のリズムだけ聞いて単語を聞かない
英語の音楽はリズムや発音に慣れる練習としてはとても良い教材です。
好きな曲を聞きながら英語に触れられるので、楽しみながら続けやすいのがメリットでしょう。
ただし初心者の場合、歌詞の意味や単語をきちんと理解せずにメロディだけを聞いてしまうと、単語の正しい発音や使い方が身につかず、リスニング力の向上につながりにくくなります。
歌詞カードを見ながら意味を確認したり、発音を真似する練習に活用できるのは、ある程度の語彙力がある中級者以上に向いている学習法です。
洋画やドラマでリスニングを勉強する
洋画や海外ドラマで実践的な英語に触れるのは、リスニングの臨場感を味わえる良い方法です。
日常会話に近い表現やネイティブの話し方に慣れることができるため、中級者以上には大きなメリットがあります。
ただし初心者がいきなり洋画だけで学習しようとすると、スラングや早口表現が多く、聞き取れないまま内容を理解した気になってしまうことも。
字幕に頼りきりになると、耳で聞き取る力が養われません。
基礎力がつくまでは、レベルに合った教材で基本を固めた上で取り入れるのがおすすめです。
レベルに合わない教材でリスニングしている
英語リスニングの力を伸ばすには、自分のレベルに合った教材を選ぶことが何より大切です。
中級者以上であれば難易度の高いニュースやディスカッション素材に挑戦するのも効果的ですが、初心者がいきなり難しい教材に手を出すと、内容がほとんど理解できず挫折する原因になります。
逆に簡単すぎる教材では成長を感じにくく、モチベーションが続きません。
理解度8割くらいを目安に、無理なく繰り返し聞ける教材を選び、徐々にステップアップするのがリスニング上達の近道です。
まとめ
英語リスニングは、何となく聞き流しているだけでは思うように力は伸びません。
しっかりと上達を実感するためには、自分のレベルに合った教材を選び、意味を理解しながら毎日継続することが大切です。
大きなポイントは下記3つです。
- 習慣化
- 理解しながら聞く
- 繰り返し確認する
この基本を意識してコツコツ続ければ、少しずつでも必ずリスニング力は伸びていきます。
今はスマートフォンやアプリ、YouTubeやポッドキャストなど中学生や高校生でも、学校の教科書以外にこうしたツールを上手に活用することで、学習の幅が大きく広がります。
英語リスニングは一朝一夕に結果が出るものではありません。
途中で「伸びないかも…」と感じても、最低でも1か月は続けてから成果を判断してみてください。
リスニングはあなたの英語力を飛躍的に高める大きな武器になります。
今日からできることから始めて、正しい勉強法でリスニングを自分の強みにしていきましょう。