ビジネスシーンでの海外企業とのやり取り、海外旅行先での現地の人とのコミュニケーション、異国の友人とのやり取り??国際化が進む現代社会では、英会話能力習得の必要性が年々高まっています。
英会話を学ぶにあたっては、教室に通ったり教材を取り寄せたり、様々な勉強方法が考えられますが、「とりあえずは自力でやってみよう」と独学を選択する方も多いのではないでしょうか。
「独学で完璧な英会話を身につける」というのは簡単なことではありませんが、それは必ずしも独学が無意味であるということではありません。
ある程度のレベルまでなら十分、独学で英会話能力を向上させることができます。
独学を選択するメリットとしては、なにより「自分のペースでコツコツと進めることができる」という点が挙げられるでしょう。
習得ペースは十人十色・千差万別ですし、学習に費やすことができる時間の多寡も人それぞれですので、気軽で自由な独学での勉強は大変魅力的に映ります。
しかし、独学というのは文字通り「独りで学ぶ」ことであり、人によっては突然大海の真ん中に放り出されたような、何をしたらいいのかわからない状態に陥りかねません。
そこで今回は、英会話を独学で習得しようと考える方の「羅針盤」となるよう、独学におけるおすすめの練習方法を紹介したいと思います。
目次
積極的にアウトプットしよう
英会話を独学で取り組もうと考えている方にまず知っておいてもらいたいのは、英会話学習における「アウトプット」の重要性です。
アウトプットは直訳すると「出力」とか「生産高」という意味になりますが、ビジネスシーンでは「学習・経験したものを活かして生んだ成果」という意味で使われます。
そして、英会話における「アウトプットする」とは、「学んだものを外に出すこと」ですから、主にスピーキングのことを指しているわけです。
一方で、英語学習にはアウトプットの他に「インプットする」勉強法もあります。
単語帳を使って語彙を増やしたり、洋画を見てリスニングを鍛えたりすることが、英会話におけるインプット・タイプの主な勉強法といえるでしょう。
インプットとアウトプットのバランス
ここで考えなければならないのが、インプットとアウトプットのバランスです。
どちらも重要なのは言うまでもないことですが、どちらをより重視したらいいのでしょうか。
結論としては、8?9割を当てるくらいアウトプットに寄せた方が、効率的に英会話を身につけることができるでしょう。
なぜなら、日本人はすでにアウトプットに対して過剰とも言えるほど、インプットの量が多いからです。
リスニング・リーディングに比してスピーキング・ライティングが得意である、という人がどれだけいるのかを考えるとわかりやすいと思います。
日本人は義務教育や高校・大学でしっかりと英語の文法・語彙を学んでいる(=十分インプットしている)ため、これまでインプットしたことをアウトプットする練習に時間を割いた方が効率良く英会話力が身につくというわけです。
そこで、いくつかおすすめのアウトプット学習法を紹介します。
映画等のセリフを復唱する
インプット・タイプの学習と並行してできる方法です。
洋画やYoutubeの動画等でネイティヴの人が言ったことを、そのまま繰り返し声に出してみましょう。
お手本を聞いた直後に復唱することで、より正しい発音・イントネーションを身につけることができます。
「独り実況」する
自分が今やっていること、考えていること、触れているものなど、内容は本当になんでもいいので、片っ端から英語で呟いてみましょう。
実際の会話では自分が言いたいことをパッと言葉にできないと、テンポや流れを妨げてうまくコミュニケーションを取ることができません。
「独り実況」をすることで英語のスピーキングを習慣づけられれば、思考から発声のタイムラグを短くすることができます。
5分ほどのスピーチ・プレゼンテーションを作成してみる
こちらも内容・テーマはなんでもいいので、5分ほどのスピーチ、あるいはプレゼンテーションを作成してみましょう。
あらかじめ用意した内容を話すことが多い、ビジネスシーンにおける英会話の練習になります。
また、普通の会話と違って段取りがあるスピーチ・プレゼンテーションでは、普段意識しづらい
- comparatively(比較すると)
- otherwise(さもなければ)
- likewise(同じように)
等の接続副詞の重要性を認識し、使い方を身につけるいい練習になります。
自分の声を録音すると効果的
これまで紹介したアウトプット・トレーニングをするとき、自分の声を録音し、現在の自分のレベルや発音の誤り・訛りを客観的に確認するようにすると、学習の効果が上がります。
恥ずかしいという気持ちがある方もいるでしょうが、ぐっと我慢して、自分の声を聞いてみましょう。
スピーチ・プレゼンテーションなら、家族や友人に聞いてもらうのもおすすめです。
独学で学ぶなら洋画や海外ドラマがおすすめ
独学で英会話を学ぶにあたって最も重要なのはアウトプットすることですが、それはインプットすることを蔑ろにしていいということではありません。
リスニング力は、インプットで身につく能力のうち日本人が不得手にしている部分なので、集中して鍛えたいところです。
そこでいくつかの理由から特におすすめしたいのが、洋画や海外ドラマ等の映像作品を見ることです。
楽しみながら勉強できる
海外の映像作品を独学に使うことをおすすめする最大の理由は、楽しみながら勉強ができるからです。
勉強が苦痛であれば、よっぽど強い目的意識がなくては継続せず、英会話の習得には至りません。
しかし逆に勉強が楽しければ、無理しないでも継続できるので、苦労したという実感がないまま力がつく好循環に入ることができます。
多角的に学習できる
指導員がいない独学においては、いつの間にか偏った英語ばかりに触れてしまいがちです。
洋画・海外ドラマの劇中には、ビジネスシーンや日常・非日常等の様々なシチュエーションが存在するので、無意識のうちに多角的な英会話を学習できます。
また、俳優の中には様々な国の出身者がいるため、イギリス英語・オーストラリア英語等、アメリカ英語以外にも触れることができます。
非英語圏出身者が英語で話しているシーンなども、参考になることがたくさんあります。
映像が理解の助けになる
洋画や海外ドラマの他にも、著名人・専門家が面白いテーマでスピーチしたり、解説したりしている動画メディア「TED Talks」も独学に活用することができます。
しかしこちらは、内容を理解するためにも集中力を割かなくてはならないので、映像がわかりやすい洋画や海外ドラマの方が、最初のうちはおすすめです。
全てのセリフが聞き取れなくても物語の流れや俳優の表情・動きから何を言ったか推測することができ、実際に英語で話すシーンでおおいに役立つ推測能力を養えます。
字幕はなるべく我慢
洋画・海外ドラマを使って学習する際の注意点をひとつ挙げておきます。
字幕利用の頻度は、できるだけ少なくしましょう。
まったく何を言っているかわからないものを視聴するのは苦痛ですので、慣れないうちはむしろ字幕をつけるべきです。
しかし字幕を見ながら学習を進めていると、だんだんと「実際の能力」と「自己評価」が解離する厄介な状況が生まれてしまいます。
問題集を使って勉強する際の「答えを先に見る学習法」のデメリットと同じです。
答えがわかっているだけに思った以上に正解に辿り着きやすくなりますし、反面、答えがわからなくなった途端、思った以上に何もわからなくなってしまいます。
他人に評価してもらう機会が少ない独学においては、自身のリスニング力を正確に把握できでいないことが障害になることがあるので、できる範囲で字幕の利用は我慢してください。
独学では「荒削り」を意識しよう
具体的な練習方法からは少し離れますが、独学の際にはインプット・アウトプットに関わらず、ある認識を持っておくべきであるということを強調したいと思います。
それは、細かいことに拘泥せず「荒削り」でよしとすべし、ということです。
時間を効率的に使う
英会話初心者は彫刻で言うと、彫り始める前の石材や木材のようなものです。
はじめから細かい意匠に拘っていては、いつまで経っても作品は完成しませんよね。
それと同じで、はじめから文法・発音・イントネーション等の細かい部分に気を取られていると、英会話を身につけるまでにどれだけ時間があっても足りません。
細かいブラッシュ・アップは十分に上達してから、あるいは英会話教室やオンライン英会話などでプロに任せることにして、まずは大量のインプットとアウトプットで基礎を固めましょう。
「クセ」がつくほど身につくのなら上々
細かいことを気にしないでいると、変な癖や間違いが身についてしまうことを危惧される方は多いと思いますが、たとえそれが間違いであっても、癖がつくほど英会話が身に染みついたのなら素晴らしい上達ぶりです。
たいていの場合は、ダイエット中の人が、少しでも筋肉をつけようと頑張っている筋力トレーニングをしている人の努力を知らないで、「痩せたいけど筋肉はつけたくない」と運動に二の足を踏んでいるのと同じことです。
つまり、杞憂ということです。
万が一癖や間違いが身についてしまったとしても、それが目立つあるいは気になるということは、他の部分が十分形になっているということですから、時間をかけてゆっくりと修正すれば問題ありません。
それでも総合的に見れば、比較的短い時間で英会話を習得できているはずです。
副詞を使いこなし1ステップ上を目指す
ここまで独学英会話学習の基本的な話をしてきましたので、最後は少しだけ実践的なアドバイスをさせてください。
ある程度英語に慣れてきてからでかまいませんので、「副詞」を意識して英会話を学んでみましょう。
副詞を会話内で使いこなせるようになれば、晴れて「脱・初心者」ということになります。
そもそも副詞とは何か
知っている方は多いと思いますが、念のために副詞について少し説明しておきます。
副詞は簡単に言えば、動詞・形容詞等の名詞以外を修飾する言葉です。
たとえば「He was listening quietly(彼は静かに聴いていた)」という文の場合、「listening(聞く)」という動詞を詳しく説明している「quietly(静かに)」の部分が副詞です。
日本語訳の「静かに」は形容動詞なので混乱するかもしれませんが、英語においては形容詞が動詞を修飾することはなく、形容動詞はそもそも存在しないので、「名詞以外を修飾しているから副詞」とざっくり捉えておけば大丈夫です。
副詞は重要ではない?
では、なぜ英会話で副詞が重要になってくるのでしょうか。
持って回った言い方になってしまいますが、それは文章において副詞が「重要ではないから」なのです。
先ほどの「He was listening quietly」という文を考えてみましょう。
この内容を相手に伝えようとする状況で、どうしても単語が思い浮かばなくて省いてしまったとしても、さほど問題がないのはどの単語かを考えてみてください。
誰がそれをしているのかは重要な情報ですので、「he」は省くことはできません。
何をしているかを省いてしまうと意味が通じませんので、「listening」でもありません。
では「quietly」はどうでしょう。
どのようにして聞いていたかは、場合によっては重要な情報かもしれませんが、無くても最低限の内容は伝わります。
このように、副詞は文章において必須ではないのです。
重要でないからこそ差が生まれる
文章において必須ではないなら、英会話に慣れないはじめのうちは優先度が低くても仕方がありませんよね。
しかし修飾語は文字通り文章を飾る言葉ですから、細かい状態やニュアンスを伝え、豊かなコミュニケーションを取るのには非常に重要な役割を果たしています。
なくてもいいからこそ、あえて使うことが余裕の演出になり、それが周囲と差をつけることにつながります。
形容詞+lyで副詞のボキャブラリーを増やす
いざ英会話で副詞を使ってみようと考えると、「必須ではない」副詞のボキャブラリーが、形容詞のそれと比べて遥かに乏しいことに気がつきます。
そこでおすすめしたいのが、「polite(丁寧だ)」を「politely(丁寧に)」、「slow(遅い)」を「slowly(遅く)」、「attractive(魅力的だ)」を「attractively(魅力的に)」にするように、知っている形容詞に片っ端から「ly」をつけてしまう方法です。
副詞化に「ly」を使わない例外や、単語自体が存在していてもあまり日常的に使われないものもありますが、大体はこれで済むので覚えておいて損はありません。
なにより、普段から形容詞・形容動詞を活用して動詞の修飾に使っている日本語話者にとって、直感的でわかりやすいのが最大のおすすめポイントです。
まとめ
独学で英会話を勉強する際は、アウトプットするタイプの学習に重点をおいてやってみてください。
その際は自分の声を録音しながら、映像作品のセリフの復唱、独り実況、プレゼン作成などをするのがおすすめです。
インプットはアウトプットと比べて少なめでいいので、洋画や海外ドラマを見て楽しみながら、継続的かつ多角的に学習しましょう。
インプット、アウトプットに関わらず、独学においては細かい作法・文法を気にする必要はありません。
自由にのびのびと学習し、「もし粗があれば、あとでプロに取ってもらえばいい」くらいの気持ちで臨みましょう。
英会話に慣れてきたら、なくても意味が通じる「副詞」を意識して使ってみてください。
副詞が使えるようになれば、単なる情報の伝達に留まらない、本当の英会話コミュニケーションへの第一歩を踏み出すことができるでしょう。