古来日本は主に中国から、近世以降になると主に欧米諸国から、政治・社会・文化など、多方面において、さまざまなものを取り入れながら発展してきた国です。
言語もその例外ではなく、私たちは日常的に、おびただしい数の外来語を使っています。
*外来語とは、日本語の中に入ってきた外国語の単語のこと。
とくに最近では、「アジェンダ」「コアコンピタンス」「ペルソナ」など、ビジネスシーンにおける、いわゆる「ビジネス横文字」の使用が顕著になっています。
しかし、「横文字」や「カタカナ語」の使用に際しては、注意しなければならないことがあります。
それは、「横文字」や「カタカナ語」として日本で定着しているものの中には、一見英語のようでありながら、その実、日本でしか通じない「和製英語」が数多く存在しているということ。
外国人との英会話で和製英語を使ってしまうと、意味が通じないばかりか、コミュニケーションに齟齬や誤解を生んでしまう可能性があります。
そこで今回は、「実は和製英語」を、クイズやランキング形式で紹介します。それぞれの和製英語をどのように言い換えればよいのかについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
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*訂正*
1) 動画で「tobaccoは英語ではない」と解説していますが、スペイン語由来の英語で、辞書にも載っています。ただし、tobaccoは、喫煙、噛み砕きなどに使用される栽培された植物の葉のこと。そして、日本語の意味の「タバコ」は、動画の解説通り、cigarette、「葉巻」はcigarです。つまり、cigaretteやcigarの中に入っている葉っぱがtobaccoになります。
2) shoe creamを「靴のクリーム?」と説明していますが、正しくは「靴墨(くつずみ)」です。
和製英語はどうやってできた?成り立ちによる分類
和製英語とは、英語を元に日本で作られた「英語のような言葉」を指します。
和製英語には、実際に存在する英単語・英熟語を違う意味で用いているものや、実際に存在する単語を勝手に組み合わせて使っているもの、元々英語ではないものなど、いくつかの種類があります。
まずは、それぞれの和製英語の成り立ちを、その例と一緒に見てみましょう。
実際に存在する単語・熟語を、違う意味で使っている和製英語
このタイプの和製英語は、その英単語・英熟語自体は実際に存在するために、ネイティブと会話する際、もっとも混乱や誤解を生みやすいと言えます。
以下の言葉が「和製英語である」ということだけではなく、それぞれの単語・熟語の本来の意味も、覚えておきましょう。
ネイティブ
和製英語としては、この記事内でも使われているように、「英語を母語とする人」を意味します。
実は、名詞の「native」は、「その土地の人」「原住民」「土着の動植物」という意味です。
なお、複数形のnativesは「(非白人の未開な)原住民」という軽蔑的なニュアンスが含まれるので、注意が必要です。
「英語を母語とする人」と言いたいときは、形容詞のnative「自国の」「本来の」を使って、「native English speaker」と表現しましょう。
ちなみに、「原住民」と言いたいときはnativeの代わりに、indigenous people「先住民」を用いるといいでしょう。
スマート
和製英語では、「すらっと痩せている」という意味で使いますが、英語では「賢い」という意味です。
日本語では「スマート」と同じ意味で、「スリム」や「スレンダー」も使われていますが、こちらは和製英語ではなく英語です。ですので、すらっと痩せている様子を表現したいときは、「slim」か「slender」を使いましょう。
ちなみに、「格好などが洗練されて」「おしゃれな」という意味で使う「スマート」は、英語でも同じsmartです。
実際に存在する単語を、存在しない組み合わせで使っている和製英語
実際に存在する単語・熟語を違う意味で使っている和製英語の次に紛らわしいのが、実際に存在する単語を勝手に組み合わせて新たに生まれた和製英語です。
このタイプの和製英語の場合、使われているそれぞれの単語の意味自体は合っているので、ネイティブに対して使っても、ニュアンスが伝わる可能性があります。
アフターサービス
「あとに」という意味の「after」と、「サービス」という意味の「service」を組み合わせ、「購入後のサービス」という意味で使われているのが「アフターサービス」。
しかし、after serviceだけでは、何のあとのサービスなのかがわかりません。
「販売」という意味の「sale」をafterの後ろに置き、「after-sales service」とすれば、「販売後のサービス」と、しっかりと意味が通じる表現になります。
ガソリンスタンド
「gasoline(ガソリン)」と、「売店」という意味の「stand」が組み合わせた和製英語です。
「ガソリンスタンド」は、アメリカ英語とイギリス英語で異なりますので注意してください。
アメリカでは通常、「gas station」、イギリスでは「petrol station」と言います。
実際に存在する単語・熟語を、日本独自の略し方で使っている和製英語
英語と日本語では、言葉を省略する感覚に違いがあるので、日本で使われている英単語・英熟語の省略形には、和製英語化しているものが少なくありません。
英語には存在しない単語なので、英会話で勘違いを生む可能性は低くなりますが、そもそも通じない、あるいは理解してもらうのに苦労するかもしれません。
パソコン
「personal computer(パーソナル・コンピューター)」が省略されてできた言葉です。
最近では、頭文字を取って「PC」と略すこともありますが、こちらはネイティブにも通じます。英会話で使う場合は、「PC」あるいは「computer」と言いましょう。
ちなみに、「ノートパソコン」も和製英語なので、「laptop」、「laptop computer」、あるいは「notebook」、「notebook computer」と言い換えてください。
アクセル
「accelerator(アクセレレーター)」が縮まってできた言葉です。アクセルは、イギリスでは「accelerator」、アメリカでは「gas pedal」となります。
バイクのアクセルを指す「スロットル」は、そのまま「throttle」で、和製英語ではありません。
発音の聞き間違いや訛りが広まった和製英語
日本に伝わったとき、あるいは、伝わる過程で発音が変わってしまったことで、生まれた和製英語もあります。
このタイプの和製英語も、単語自体が英語にはないので言い換えは必須です。
ワイシャツ
「ワイシャツ」は、「white shirt(ホワイトシャツ)」が由来であると言われています。
「white」の発音が「ホワイト」ではなく「ワイト」と聞こえたからでしょう。
しかし、そもそも英語で「ワイシャツ」は、「white shirt」ではなく「dress shirt」あるいは単に「shirt」なので、「ワイシャツ」と言っても通じません。
ちなみに、主に西日本で使われている「カッターシャツ」は、運動具メーカーミズノの創業者・水野利八が「勝った!」と喜ぶ観客の歓声から名付けた言葉らしいので、こちらも和製英語ということになります。
ミシン
「縫う機械」という意味の「sewing machine」の、「machine(マシーン)」の部分が「ミシン」に転訛してできた言葉です。
肝心の「sewing」の部分は、ミシンが日本に伝わったとき、あるいは伝わっていく過程で消えてしまったようです。
番外編 英語以外の外国語にルーツがある言葉
近世の日本は、ポルトガルやオランダなど、非英語圏の国々との交流が盛んだったので、英語由来ではない外来語も日本語には数多く存在します。
英語由来ではない外来語は、厳密には「和製英語」ではありませんが、カタカナで表記され、英語と紛らわしいという共通点があるので、ここで紹介しておきます。
タバコ
スペイン語の「tabaco」から来ている言葉です。英語では、紙巻きタバコは「cigarette」、葉巻は「cigar」です。
実は英語には、「tobacco」という単語もあるのですが、こちらは「タバコの葉」を指します。
コップ
「コップ」は、オランダ語の「kop(コップ)」、またはポルトガル語の「copo(コッポ)」に由来する言葉だと言われており、英語の「cup(カップ)」が転訛した言葉ではありません。
一般的に、取っ手が付いているものを「カップ」、取っ手が付いていないものを「コップ」と呼ぶのは、日本語独特の使い分けです。
英会話で使うときは、陶器やプラスチック製などのものなら「cup」、ガラス製のものなら「glass」と言いましょう。
それ、実は和製英語!和製英語を「意外さ」でランク付け
和製英語は、私たち日本人の日常生活にかなり浸透しています。
ここまで紹介したもののように、和製英語の中には、使用頻度の高さや「英語っぽい」などの理由から、実際に使用されている英単語・英熟語だと思い込まれているものが数多くあります。
そのような「実は和製英語」を、「意外さ」の観点から1位から5位まででランク付けしてみました。
みなさんが今まで、「実際に使える英語だ」と思い込んでいた単語・熟語がランクインしているかもしれません。
5位 コンセント
第5位にランクインしたのは、「コンセント」です。
同じ読み方の「consent(同意する)」という単語があり、いかにも英語っぽい響きですが、実は和製英語です。
コンセントのことは、主にイギリス英語では「(wall) socket」、アメリカ英語では「(electric) outlet」と言います。
ちなみに、「コンセント」は壁などに設置されている差し込み口のことであり、差し込む側の「プラグ」を指して「コンセント」と言うのは、日本語としても間違っています。
4位 テンション
「テンションが上がる(下がる)」あるいは「テンションが高い(低い)」のように使われますですが、英語の「tension」は「(物理的・精神的な)緊張」という意味なので、「気分」という意味で使うのは日本独自の用法です。
「テンションが上がる/高い」は「excited(興奮している)」、「テンションが下がる/低い」は「down(気分が沈んでいる)」などと表現するといいでしょう。
3位 クレーム
「claim」という英単語が実際にあり、これに「要求する、主張する」といった意味があるため、和製英語であるということがとてもわかりにくくなっています。
しかし、「claim」には日本語で使われているような、「苦情を言う」、「難癖をつける」のような意味はありません。
「苦情を言う」と表現するときは、「make a complaint」、あるいは動詞の「complain」を使いましょう。
2位 シュークリーム
シュークリームは、フランス語でキャベツなどを意味する「chou」と、英語の「cream」が組み合わさってできた言葉なので、厳密には和製英語とは言えないかもしれません。
シュークリームは、フランス語では「chou à la crème(シュー・ア・ラ・クレーム)」、英語では「cream puff(クリーム・パフ)」と言います。
「puff」は「ふわっとふくらんだもの」という意味なので、「cream puff」は「クリームが入った、ふわっとふくらんだもの」という意味になります。
ちなみに、先述したようにshoe cream(シュー・クリーム)は「靴墨(くつずみ)」という意味のれっきとした英語です。
1位 メリット・デメリット
和製英語としてかなり頻繁に使われていること、また、実際に「merit / demerit」という単語が存在し、意味も似ていて紛らわしいということから、1位に相応しいといえます。
英語の「merit」は「長所・美点」、「demerit」は「落ち度・欠点」という意味です。
よって、「(何者かにとって)利益になりうる点・損失になりうる点」という意味の「メリット・デメリット」とは、少し異なります。
和製英語の「メリット・デメリット」の言い換えには、「advantage / disadvantage」を使いましょう。
惜しくもランクインを逃した「実は和製英語」な単語・熟語一覧
カンニング | cheating |
---|---|
サンドバッグ | punching bag, punchbag |
ソフトクリーム | soft serve, soft ice |
タッチパネル | touchscreen, touch screen |
ノースリーブ | sleeveless |
パーカー | hoodie (hoody), hooded sweatshirt |
ハンドル | (steering) wheel |
フライドポテト | French fries, French-fried potatoes, chips |
ポスト | post box (postbox), letter box, drop box |
ミス | mistake, error |
和製英語をクイズで学ぼう!
和製英語について理解を深めてきたところで、次は和製英語のクイズに挑戦してみましょう。
クイズを通して「自分で考える」というプロセスを経ることで、ただ文字を読むだけよりも、知識が定着しやすくなります。
- 「トランプ」は実際の英語と和製英語のどちらでしょう。
- 和製英語
英語の「trump(トランプ)」は「切り札・奥の手」という意味で、日本語の「トランプ」のことは単にcards、そして「トランプをする」は「playing cards」と言います。
カードを使う遊戯として、日本には他に「カルタ」がありますが、これはポルトガル語で「手紙」や「カード」を意味する「carta」が、特定の遊戯・競技を指すようになった外来語です。
- 次の英単語のうち、「面白い」という意味ではないものはどれでしょう。
1. interesting 2. funny 3. unique - 3.unique
「unique」は「唯一の」「独特な」「珍しい」という意味の単語で、日本語で使われている「ユニーク」のように、「面白い」という意味はありません。
日本語では、「独特な」という意味が転じて、「面白い」という意味を持つようになったと考えられます。
「面白い」と言いたいときは、他の選択肢の「interesting」や「funny」を使いましょう。
- 次のビジネス用語のうち、和製英語なのはどちらでしょう。
1. イシュー 2. ブラッシュアップ - 2. ブラッシュアップ
ビジネスシーンでは「企画やアイディアに、さらに磨きをかける」という意味で使われる「brush up(ブラッシュアップ)」ですが、本来の意味は「身なりを整える」「復習する・やり直す」「(元々あった知識・能力を)取り戻す」という意味です。
ビジネス用語としての「ブラッシュアップ」は、「洗練する・磨きをかける」という意味の「refine」に置き換えることができます。
和製英語のデメリット
最後に、和製英語が日本人にもたらしているデメリットについて、解説します。
まさに、今、和製英語の「デメリット」と自然に使ったように、和製英語は、日本語に存在しない語彙を補い、表現やコミュニケーションの幅を大きく広げていますが、一方で、英会話を学んでいる、あるいは学びたいと考えている人にとっては、その存在が障害になる場合があります。
デメリット1:間違った意味・文法を覚えてしまう
実際に存在する英単語・英熟語を違う意味で使っているタイプの和製英語は、単語・熟語の意味を誤って覚えてしまう原因になります。
また、cost cut「コストカット」、image up「イメージアップ」などの文法的におかしな和製英語は、正しい文法の習得の妨げになりかねません。
ちなみに、cost cutはcost cuttingなら使えます。あるいはcutを動詞で使ってcut costs。image upはimprove/enhance one’s imageなどが正しい表現です。
デメリット2:勘違い・誤解を生んでしまう
ネイティブと会話するときに和製英語を使ってしまうと、意図通りに言葉が伝わらず、勘違いや誤解を生んでしまうことがあります。
たとえば、ある人が英語で自己紹介をするときに、自分がマンションに住んでいることを伝えるつもりで、「I live in a mansion.」と言ったとします。
英語の文章としては成り立っているので、そのまま会話は進むでしょう。
しかし、英語で「mansion」というのは、「大邸宅・豪邸」を意味する言葉です。
実際には普通のマンションに住んでいるその人は、会話をしている相手の中では、「大邸宅・豪邸に住んでいる人物」と誤解されてしまうのです。
日本語の「マンション」に相当する英語は、apartment、あるいはcondominiumです。
「和製英語かも?」と疑う意識が大事!
ここまで解説してきたように、和製英語は、私たちの日常生活やビジネスシーンに深く浸透しています。
重要なのは、日常的に使われる「英語っぽい言葉」に対して、「和製英語かもしれない」という意識を持ち、調べる習慣をつけることです。
それは、間違った言葉を使わなくなるだけでなく、「疑問を持ち、調べ、考える」というプロセス自体が、英語の学習においては大切だからです。
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まとめ
和製英語の中には、日常生活に広く馴染むあまり、実際に使える英語であると勘違いされているものが数多くあります。
和製英語に関する知識の不足は、英単語・英文法への間違った理解や、英語によるコミュニケーションの妨げに繋がりかねません。
日本語として使われている「英語っぽいカタカナ語」や「横文字」「省略語」については、「和製英語かもしれない」という意識を常に持ち、逐一調べる習慣をつけることが大切です。
また、言語は常に進化をしています。日本語、特に和食の食材の名前などはすでに英語化しているものがたくさんあります。そのうち、いくつかの和製英語が英語として定着することもあるかもしれません。常に最新の情報を採り入れる努力を惜しまないようにしましょう。