
仮想空間で英会話を練習できるVR英会話が注目を集めています。
臨場感のある環境でAIとの対話を重ねることで、スピーキングの力を自然に伸ばせると評判です。
この記事では、VR英会話の特徴や主要サービス、始める前に知っておきたいポイントなどを紹介します。

2014年に英語学習を本格的に開始。学習開始からおよそ2年半でTOEIC980点・英検1級に到達。現在は試験対策から離れ、英語を実用のツールとして使い続けている。この経験をもとに、言語や学びにまつわるテーマを中心に、学習者の視点を活かした執筆を行っている。
VR英会話の特徴とメリット

VR英会話では、これまでの学習方法とは違った体験ができるのが特徴です。
ここでは、VRならではの学び方がどのように英会話に役立つのかを紹介します。
仮想空間内で英語を話す新しい学習手法
VR英会話とは、専用のゴーグルを使って仮想空間に入り、画面上に現れる相手と英語で会話をする学習スタイルです。
VRとは「Virtual Reality(仮想現実)」の略で、デジタル空間上に再現された教室やオフィスなどの場所で、英語を実際に使うような感覚で練習ができます。
多くのサービスでは、音声による会話や選択肢の操作を通じて場面が進行するインタラクティブな構成になっており、自分の発話や行動に応じて相手の反応が変わることが大きな特徴です。
「見る」「聞く」「話す」といった複数の感覚を同時に駆使して、英語を使う体験が自然にできることが、従来の学習法にはないVR英会話ならではの魅力です。
360度の臨場感ある環境でスピーキング練習ができる
VR英会話は、360度を見渡せる仮想空間が再現されており、まるでその場に入り込んだような感覚で英語を話せます。
教室やカフェ、空港のロビーといった場面が用意されていて、現実に近い状況の中で会話を練習できる点が特徴です。
背景の音や人物の動きまで細かく表現されています。
VR英会話では非常に臨場感のある体験ができるため、実際の会話場面を想像しやすく、そこで練習した表現も記憶に残りやすいのがメリットです。
AI相手の会話により、ミスを気にせず何度も繰り返せる
VR英会話では、AIによって動くキャラクターと英語で会話するスタイルが一般的です。
相手は人間ではなくプログラムなので、どれだけ言い直しても、文法や表現を間違えても、気まずくなることはありません。
話しかけた内容に応じて相手の返答が変わる仕組みになっており、言葉の選び方によって会話の流れも変化します。
また、発音や文法に対してリアルタイムでフィードバックが表示される機能を備えたサービスもあります。
自分の間違いにその場で気がつくことができるだけでなく、インプットしたものをすぐにアウトプットすることが可能です。
このように、間違いを恐れることなく、何度でも好きなだけ練習できることも、VR英会話が人気を集める理由の一つです。
時間帯や場所に縛られず、自由に取り組める柔軟性
VR英会話では、あらかじめ時間を予約したり、講師とスケジュールを合わせたりする必要がありません。
レッスンは自分ひとりで行えるため、朝の出勤前や寝る前の数分など、スキマ時間に練習できます。
今日は10分、明日は30分といったように、その日の予定や体調に応じて学習時間を調整できる柔軟なスタイルです。
まとまった時間が取れなくても、短時間でも英語を話す習慣を維持できることは、スピーキング力の向上において非常に重要なポイントです。
対人のオンライン英会話の場合、どうしても相手への遠慮が生まれてしまいます。
VR英会話なら何の気兼ねも必要ありません。
そのため、英語学習への心理的ハードルが下がり、英語を話すことを習慣化しやすいこともVR英会話ならではの特徴です。
VR英会話と従来の英語学習との違い

ここまでで見てきたように、VR英会話には、これまでの学習法にはなかったさまざまな特徴があります。
では、オンラインレッスンや教材による学習とは、どのような点が異なるのでしょうか。
オンライン英会話や教材と比べたときの立ち位置の違い
英語学習には、オンライン英会話や教材、アプリなど、さまざまな手段があります。
VR英会話は、そのなかでも「体験を通じたアウトプット」に特化した学習法だと言えるでしょう。
たとえば、教材を使った学習は、文法や語彙をインプットすることが中心です。
オンライン英会話では、講師と実際に話しながら柔軟な対応力や即応力を養うことができます。
これに対してVR英会話は、あらかじめ設定されたシチュエーションの中、繰り返し会話練習ができるのが特筆すべきポイントです。
そのため、場面ごとの言い回しや言葉の使いどころを体験的に身につけるのに向いています。
VR英会話は、それ単体で英語力を完成させるものではなく、他の学習手段と組み合わせることで効果を発揮します。
たとえば、教材で覚えた表現をVRの仮想空間で使ってみたり、VRで練習した場面をオンライン英会話で実践したりといったように、それぞれの手段を補い合う使い方が可能です。
英語を学ぶ目的や段階に応じて、VR英会話をどこに組み込むかを考えると、より実りある学習となるでしょう。
人との対話 vs プログラム主導の会話練習
英会話の練習では、誰と話すかが学習内容や得られる経験に大きく影響します。
オンライン英会話では、講師という人間を相手にするため、その場でのやり取りには柔軟な対応力が必要です。
ただ、言い間違いや聞き返しに対して講師が臨機応変に反応してくれるため、英語レベルを問わず、ある程度会話を進めていくことができます。
その過程で、会話での即興性が鍛えられるのが利点です。
一方、VR英会話の多くは、プログラムによって動くキャラクターとの対話をベースにしています。
多くのサービスでは、会話の流れはあらかじめ想定されたシナリオに沿って進行し、発話内容によって多少の変化はあるものの、完全に自由なやり取りができるわけではありません。
とはいえ、だからこそ繰り返し練習がしやすく、「この場面ではこう言う」といった表現の使い方を自分のペースで身につけていくことができるのです。
このように、人と話すことにはその場でのやり取りから学べる強みがあり、プログラムとの対話には同じことを繰り返し練習できるという別の価値があります。
VR英会話は、実戦に出る前の準備として、あるいは、表現を定着させるためのトレーニングとして活用するのが効果的です。
インプット中心の学習では得られにくい、身体感覚をともなうやり取り
英語を覚えたはずなのに、いざという場面でうまく言葉が出てこないという経験は、多くの人が感じたことがあるのではないでしょうか。
知識として身につけた表現も、それを実際の会話において使う機会がなければ、必要な場面で自然に引き出すことは難しくなります。
言葉を声に出し、相手とやり取りをしながら覚えるという体験が、記憶の定着には欠かせません。
VR英会話では、仮想空間の中で相手の動きや表情を見ながら会話を進めていきます。
視線を向けたり、場面に応じた行動を取ったりといった要素が加わることで、英語をただ音として覚えるのではなく、使う状況ごと記憶に残すことが可能です。
たとえば、カフェで店員に注文するシーンなら、メニューを見ながら話したり、相手の動きに合わせて返事をしたり、周囲の環境ややり取りの流れも含めて、一つの体験として記憶に残ります。
こうした身体感覚をともなうやり取りは、学んだ表現を必要なときに思い出す助けになります。
VR英会話では、英語を知識としてだけでなく、場面や動きとセットで覚えられるので、インプット中心の学習では得にくい、実際に「使える感覚」を身につけやすいのです。
VR英会話サービス4選

ここまで、VR英会話とは何か、どんな特徴があるのか、他の学習法とどのように違うのかについて見てきました。
では、実際にはどのようなサービスがあるのでしょうか。
ここではいくつかのVR英会話サービスと、それぞれの特徴について紹介していきます。
スマート・チューター

「スマート・チューター」は、ビジネスパーソン向けに設計されたVR英会話サービスです。
営業や開発、財務などの部署ごとに想定される英会話の場面を幅広くカバーしており、たとえば会議、面接、商談、上司や部下とのやり取りなど、実際の業務に即したテーマでトレーニングを行うことができます。
レッスンでは、VRゴーグルを装着し、仮想空間の中でAIキャラクターを相手に英語を話すことで、臨場感のある練習が可能です。
受講者の目的や苦手分野に応じて、適切なコースが自動で提案される仕組みも用意されています。
各コースには、自由なテーマでAIと会話ができる「AI Teacherモード」があります。
こちらは、定型のレッスンに縛られず、より自然な言い回しなどを試行錯誤できるモードです。
会話内容に対してAIが即時に発音や語彙のフィードバックを返してくれるため、自分の癖や言い回しの誤りにその場で気づくことができ、何が通じにくかったのか、どこをどう修正すればよいのかを明確に把握できます。
スマート・チューターの対応機材は、Meta Quest 2や3などのスタンドアローン型VRゴーグルです。
月額は19,800円からで、10日間の無料体験期間も用意されています。
なお、Meta Quest 2などのVRゴーグルを所有していない場合でも、無料でレンタル可能です。
機材をすでに所有している場合は、月額料金が3,000円引きになる割引制度もあります。
Mondly VR

「Mondly」は、全世界で1億人以上が利用している語学学習アプリで、旅行や日常会話を中心に30以上の言語に対応しています。
「Mondly VR」は、そのVR版として開発されたアプリです。臨場感のあるVR空間にて、英会話の練習ができます。
Mondly VRでは、レストランでの注文やホテルのチェックイン、空港でのやり取りなど、旅行を想定したシーンが用意されており、仮想空間に入り込んで実際の会話のように学習できるのが特徴です。
会話はシナリオに沿って進行し、ユーザーの発話内容に応じてフィードバックしてくれます。
完全なフリートークには対応していませんが、音声認識を活用したアウトプット練習ができる構成は、初心者にとって取り組みやすい内容と言えるでしょう。
アプリはMeta QuestストアやSteamで購入でき、価格は1,000円台とVR対応アプリとしては非常にリーズナブルです。
ゴーグルは別途自前で用意する必要がありますが、すでにVR機器を持っている人には手軽に始められる選択肢です。
売り場のやさしい英会話VR

「売り場のやさしい英会話VR」は、日本英語検定協会が開発した、接客業に特化した英語学習教材です。外国人客への案内やレジでの対応など、実際の売り場で使われる63の定型フレーズを集め、英語初級者でも無理なく発話練習ができるように設計されています。
TOEIC420点以下の学習者を対象としており、基本的なやり取りを繰り返すことで、現場ですぐに使える表現を自然に身につけていく構成です。
教材には、スマートフォン用の専用アプリのほか、テキスト、CD、復習テスト、加えて、組み立て式の簡易VRゴーグルが含まれています。
価格は14,040円(税込)です。学習期間の目安は約3か月、1回あたり10~15分の短時間で完結するため、通勤中などのスキマ時間を活用して継続しやすくなっています。
学習内容は「応答体験」「トレーニング」「実践体験」の3つのモードで構成されており、音声波形に合わせた発話練習や、音声認識による○×判定、VR映像によるロールプレイなど、視覚と聴覚を活かした体験型学習が特徴です。
精密な採点を行うものではありませんが、ゲーム感覚で繰り返し発話することで、英語を話すことへの抵抗感を取り除くことができます。
また、アプリはVRゴーグルなしでも利用可能です。
自宅ではVRによる没入型の練習を、外出先では画面操作による反復学習を行うといったように、生活スタイルに合わせた柔軟な使い方ができます。
初めて英語を学ぶ人や、現場で実際に英語を使う必要がある人にとって、導入しやすく、継続しやすい教材と言えるでしょう。
Immerse

「immerse」は、バーチャル空間で本格的な英語レッスンが受けられる英会話プラットフォームです。
対応機器はMeta QuestシリーズのVRゴーグルですが、PC(Google Chrome)にも対応しており、VR機器がなくても利用できます。
レッスンは、実在の講師(ガイド)がVR空間にアバターとして登場し、リアルタイムで進行します。
受講者自身もアバターとして参加し、他の学習者とともに、日常生活や仕事の場面を想定した英会話を実践形式で学べるスタイルです。
また、講師とのレッスン以外に、AIが制御するアバターと24時間いつでも会話練習できるモードもあります。
フリートーク形式で自由に話しかけることができ、発音や表現に対して即時にフィードバックを受けることが可能です。
相手が人間ではないため、発音や言い間違いを気にすることなく何度でも練習できるのが魅力です。
プランは1か月、3か月、6か月の3種類で、料金は月額5,400円からです。
いずれも14日間の無料トライアルが付いています。
すべてのプランで、レッスンやAI練習、各種イベントなど全コンテンツを無制限に利用できます。
VR英会話の注意点

VR英会話には多くの魅力がありますが、導入にあたって確認しておきたい点もいくつかあります。
では、具体的にどのような点に注意が必要なのでしょうか。
VR酔い・疲労感には個人差がある
VRゴーグルを使った映像体験では、映像の揺れや奥行きの感覚により、乗り物酔いに似た不快感や疲労感を覚えることがあります。いわゆる「VR酔い」です。
症状としては、目の疲れ、頭痛、吐き気、軽いめまいなどが挙げられます。
初めてVRを体験する人や乗り物酔いしやすい体質の人は注意が必要です。
VRが初めての場合、短時間から始めて少しずつ慣れていくことをおすすめします。
使用中に違和感を覚えた場合は、ゴーグルを外してしばらく休息しましょう。
VR酔いには個人差があるため、無理をせず、自分の体調に合わせて様子を見ながら使用してください。
使用機器の準備が必要
VR英会話を始めるには、対応するVRゴーグルと専用アプリ、またはパソコンなどの機器が必要です。
現在主流となっているのは「Meta Quest 2」や「PICO 4」など、ゴーグル本体だけで動作するスタンドアローン型です。
多くのVR英会話サービスはこのタイプに対応しており、マイクやスピーカーもゴーグルに内蔵されています。
一方、「immerse」のように、パソコンから利用できるサービスもあります(VRゴーグルを使用しない場合は、平面画面での操作となります)。
この場合、Google Chromeブラウザに加え、マイクやイヤホン・ヘッドホンが別途必要です。
なお、ノートパソコンにはマイクが内蔵されていることもありますが、音質や感度にばらつきがあり、英会話学習には十分でない場合もあります。
デスクトップPCの場合、マイクが付いていない製品も少なくありません。
マイクの性能に不安がある、もしくは、内蔵マイクがない場合、ピンジャックやUSBで接続する外付けマイクを用意しておく必要があります。
一方、簡易VRゴーグルにスマートフォンをセットして使うタイプもあります。
「売り場のやさしい英会話VR」のように、この形式に対応している例もありますが、基本的には動画視聴に近い構成であり、AIとの音声会話などには対応していないことが多いです。
機材の種類や必要な準備はサービスによって異なるため、利用前に公式サイトなどで動作環境を確認しておきましょう。
また、VR機器の操作や設定にはある程度の慣れも必要です。
最初は、メニューの呼び出し方やアプリの起動などで戸惑うこともあるので、こちらも併せて確認しておきましょう。
通信環境とスペースにも注意
VR英会話を利用する際は、通信の安定性が非常に重要です。
映像や音声をリアルタイムでやり取りするため、Wi-Fiが不安定だと会話が途切れたり、映像がカクついたりする原因になります。
サービスによって推奨される速度は異なりますが、少なくとも20Mbps以上の下り速度が目安です。より安定した接続を求めるなら、有線LANを使用しましょう。
また、VRゴーグルを装着すると周囲の様子が見えなくなるため、安全に使用できるスペースを確保しておく必要があります。
VR英会話は基本的に座ったままで利用できますが、手の動きや頭の向きに合わせて画面が変化するため、腕や顔の周囲にはある程度の空間が必要です。
家具や壁にぶつからないよう、事前に周囲を片づけておきましょう。
VR英会話についてのまとめ
英語を学ぶ方法は大きく広がり、今では仮想空間で会話の練習をする時代になりました。
興味を持った今こそ、新しい学びのスタイルに触れてみる絶好のタイミングです。
まずは無料体験から始めて、VRならではの臨場感や学び方の違いを実感してみてください。
英語を「知る」から「使う」へとつなげる選択肢として、VR英会話はこれからますます注目されていくはずです。