英語学習者がぜひ習得しておきたいことの一つに、イディオムがあります。
イディオムとは、2つ以上の単語を合わせて、1つの特定の意味を表す言い回しのことで、日常英会話によく登場します。
イディオムを習得することで、より実践的、かつ豊かな表現力が身につき、ネイティブとスムーズに会話ができるようになります。
とはいえ、「イディオムって難しい…」「イディオムの覚え方が分からない…」と感じている英語学習者は多いでしょう。
そこで本記事では、イディオムを学習するメリットと覚え方、そして実際に知っておきたい便利なイディオムを紹介します。
目次
イディオムの覚え方についてのYouTube動画
イディオムとは一体何なのか、また、イディオムの覚え方とよく使うフレーズについて動画で紹介しているので参考にしてください。
イディオムとは?
イディオムとは、2つ以上の英単語を合わせ、それぞれの単語の本来の意味とは異なる使い方をする言い回しのことです。
日本語の“慣用句”をイメージすると分かりやすいでしょう。
例えば、有名な英語のイディオムの一つに、“a piece of cake”があります。
直訳は、「一切れのケーキ」なのですが、「とても簡単な」「朝飯前で」という意味のイディオムとして使われます。
もう一つ、“ring a bell”というイディオムは聞いたことがありますか?直訳すると「ベルを鳴らす」なのですが、「ピンとくる」「心当たりがある」という意味になります。
このようにイディオムは、“piece”や“cake”、”ring”や”bell”など、一つひとつの単語の意味を知っていたとしても、全体の意味を推測するのが難しいという特徴があります。
英語のネイティブスピーカーは、このようなイディオムを会話で使うことが多いので、イディオムの習得は英語をマスターする上で欠かせません。
イディオムと熟語の違い
イディオムは、熟語とよく混同されるのですが、厳密には熟語とイディオムは別物です。
どちらも、「複数の単語を合わせて、ひとつのある特定の意味を表す言葉」ではありますが、特徴が異なります。
イディオム | 熟語 | |
---|---|---|
例 | ・a piece of cake (とても簡単なこと) ・ring a bell ・over the moon |
・look forward to (楽しみに待つ) ・go to bed ・a lot of |
特徴 | ・本来の単語の意味とは 異なる意味であることが多い ・比喩表現が多い |
・単語から意味を推測しやすい |
イディオムは、直訳しても意味がわからないことが多いのに対して、熟語は使われている単語からかなりの確率で意味を推測することができます。
つまり、日本語の“慣用句”にも言えるように、イディオムには「比喩表現」が多く用いられているという特徴があります。
イディオムを学習するメリット
続いて、英語学習者がイディオムを勉強するメリットについて紹介します。
「なぜイディオムを知っておくといいの?」と思う方は参考にしてください。
1.実践的な英語力が身につく
イディオムを習得することで、表現力が豊かになり、かつより実践的な英語力が身につきます。
その理由は、ネイティブスピーカーは、日常会話の中でイディオムを使うことが多いからです。
イディオムの知識があれば、日常会話の中で、ネイティブがふと発したイディオムを理解できるため、会話の流れにしっかりついていくことができます。
英語でのコミュニケーション力を身につけることを目標に英語を勉強しているのであれば、イディオムを学習すると効果を実感しやすくなるでしょう。
2.リスニング力が伸びる
イディオムを学習すると、リスニング力を強化するのに大いに役立ちます。
先に述べたように、ネイティブの日常会話には多くのイディオムが登場しますが、知らないイディオムの意味を推測するのは容易ではありません。
例えば、上で紹介した“a piece of cake”というイディオムが会話に出てきても、イディオムの意味を知らないと、「ケーキについて話している」「一切れのケーキが何だろう?」と話の意図を読み違え、結局何の話をしているのかわからなくなってしまいます。
つまり、知らない単語、熟語、イディオムは、音として認識できたとしても意味が取れないので、結局は聞こえないのと同じことなのです。
でも、もしその意味を知っていれば、そこで会話の流れが止まることなく、相手の話す英語を誤解することなく聞き取れるようになります。
従って、イディオムを多く知っていれば知っているほど、英語を正確に聞き取れるようになるというわけです。
「単語と熟語、英文法の知識はあるし、発音もイントネーションも理解しているのに、なぜか英語が聞き取れない、話の内容が理解できない…」という人は、イディオムの知識が不足していることが原因かもしれません。
イディオムを学習すれば、効果的にリスニング力を伸ばすことができると言えます。
イディオムの効果的な覚え方
次に、イディオムを効果的に覚える方法を紹介します。
参考書を使って片っ端から暗記する
英単語や熟語を暗記するのが得意という方には、英語のイディオムに特化した参考書を活用するのがおすすめです。
参考書を使えば、自分で苦労して集めなくても、500語~600語といった膨大な数のイディオムを一気に知ることができます。
また、「顔の部位を用いたイディオム」「食べものを用いたイディオム」など、イディオムをテーマごとに分類、そしてそれらをまとめて学習できるというメリットもあります。
おすすめの参考書:『英語はもっとイディオムで話そう』
こちらの参考書には、再頻出の英語のイディオムが600個掲載されています。
日常会話でよく出てくるカジュアルなイディオムから、ビジネスシーンで使えるフォーマルな言い回しまで、様々な表現をこの1冊で学べます。
「たくさんのイディオムを効率よく学習したい!」という方は、このようなイディオムに特化した参考書を活用するといいでしょう。
海外ドラマや映画を観て覚える
海外ドラマや映画は、ネイティブが日常的に使うイディオムの宝庫です。
ですので、ドラマや映画のストーリーを追う中で自然とたくさんのイディオムに出会うことができます。
「参考書よりも楽しく、できるだけ記憶に残りやすい方法でイディオムを覚えたい!」という方は、海外ドラマや映画のセリフでイディオムを学ぶといいでしょう。
気になるイディオムが出てきたら、一時停止をしてメモを取り、オリジナルのイディオム集を作成することをおすすめします。
例文とセットで覚える
イディオムはとにかく数が多いので、一つずつ覚えていくと同じ単語が使われたイディオムと混同してしまったり、使わないうちにどんどん忘れてしまったりします。
そもそもイディオムは、文脈があってこそ意味をなすものなので、例文とセットで覚えるのがおすすめです。
例えば、“a piece of cake”というイディオムなら、“The test was a piece of cake.(そのテストはとても簡単だった)”のように例文とセットで覚えるのです。
以下では、便利なイディオム表現を覚えやすい例文とセットで紹介していますので、ぜひ英語学習に活用してください。
日常生活で使える便利なイディオム5選
ここまでで、イディオムを学習するメリットや覚え方についてお伝えしました。
次に、日常生活で使える便利なイディオムをわかりやすい例文とともに紹介します。
on the tip of one’s tongue 「喉まで出かかっている」
“on the tip of one’s tongue”の直訳は、「~の舌の先端に」ですが、「(名前や言葉などが)喉まで出かかっている/出てきそうで出てこない」という意味で使われるイディオムです。
例文
・On the tip of my tongue, but I can’t remember his name.
「喉まで出かかっているけど、彼の名前が思い出せません」
・What’s the name of the movie? It’s on the tip of my tongue!
「あの映画の名前って何だっけ?ここまで出てるんだけど!」
under the weather:「体調や気分が優れない」
“under the weather”の直訳は、「天気の下で」ですが、体調や気分が優れないことを表すイディオムです。
日常生活では、“I’m feeling sick.”と同じくらい“I’m under the weather.”をよく使います。
例文
・My husband is under the weather today, so he called in sick.
「今日、夫は体調が優れないため、仕事を休みました。」
・I’ve been feeling under the weather for the past few days.
「私はここ数日、体調が優れません。」
break a leg:「頑張って」
“break a leg”は、「頑張って」「成功を祈る」という意味のイディオムです。
直訳すると、「足を折れ」となんだか恐ろしい意味になりますが、あくまでも相手の成功を祈るポジティブなニュアンスの言い回しです。
例文
・I heard that you are giving a presentation tomorrow. Break a leg!
「明日、あなたがプレゼンテーションをすると聞きました。頑張ってください!」
see eye to eye:「意見が一致する」
“see eye to eye”は、直訳すると「目と目が合う」ですが、「意見が一致する」「考え方が合う」という意味で使われるイディオムです。
日常生活はもちろん、ビジネスシーンなどのフォーマルなシーンでも使える便利なイディオムです。
例文
・I’m glad we see eye to eye on this.
「これに関して考え方が同じで嬉しいです。」
・I don’t get along with my boss because we don’t see eye to eye on things.
「私の上司とは考え方が合わないので、うまくやっていけません。」
sleep on it:「よく考える」
“sleep on it”の直訳は、「その上で眠る」ですが、「一晩考える」「ゆっくり時間をかけて考える」という意味のイディオムです。
日常会話でとてもよく使われるカジュアルな表現になります。
“Let me think about it.(考えさせて)”と伝えるより、“Let me sleep on it.”と言う方が、「その日中に決断できそうにない」「ゆっくり時間をとって考えたい」という気持ちを伝えることができます。
例文
・Sleep on it for a few days, and let me know.
「何日かよく考えて、(あなたの考えを)聞かせてください。」
・It’s a big decision to make. Let me sleep on it.
「これは大きな決断です。よく考えさせてください。」
上級者なら知っておきたい!使えるとかっこいいイディオム5選
続いて、特に英語学習上級者なら知っておきたい、使えるとかっこいいイディオムを紹介します。
over the moon:「有頂天で」
「有頂天で」「天にも昇る気持ちで」という意味のイディオムです。
“happy”では、言い表せないほど嬉しいときや幸せなときに、“over the moon”を使ってみましょう。
例文
・I was over the moon when I heard about the news.
「私はその知らせを聞いたとき、天にも昇る気持ちだった。」
・I’m over the moon about finally getting a car.
「私はやっと車を購入することができて、有頂天です。」
take it with a pinch of salt:「(話を)鵜呑みにしない」
“take it with a pinch of salt”の直訳は、「塩一つまみ入れて食べる」ですが、「(話を)鵜呑みにしない」「(話)を真に受けない」という意味のイディオムです。
例文
・You should take what he says with a pinch of salt.
「彼の言うことを鵜呑みにしてはいけません。」
don’t judge a book by its cover:「(人やものを)外見だけで判断しない」
don’t judge a book by its coveを直訳すると、「本の表紙だけで、本の中身を判断しないで」ですが、本だけでなく人やものなどに対して幅広く使われるイディオムです。
例文
・You should never judge a book by its cover.
「絶対に(人やものを)外見だけで判断してはいけません。」
when pigs fly:「あり得ない話である」
when pigs flyを直訳すると、「豚が空を飛ぶとき」となるこのイディオムは、「あり得ない話だ」「無理だろう」といった意味になります。
当たり前ですが、豚が空を飛ぶことなんてことはあり得ません。つまり、このイディオムは、豚が空を飛ぶに等しいくらいあり得ない話だということです。
例文
・She’ll probably clean her room when pigs fly.
「彼女が部屋を片付けるのは無理だろう。」
・Maybe it’ll happen when pigs fly.
「それはあり得ないかもしれないね。」
a taste of one’s own medicine:「自業自得」
“a taste of one’s own medicine”の直訳は、「自分自身の薬の味」ですが、「他人にしたことと同じ痛い目に遭う」「他人に対する行いが自分に返ってくる」という意味、つまり「自業自得」という意味になります。
例文
・It seems like he got a taste of his own medicine.
「それは彼の自業自得ですね。」
・You should give her a taste of her own medicine.
「あなたは、彼女にやられる側の気持ちを味わわせるべきです。」
ビジネスシーンで大活躍のイディオム5選
続いて、ビジネスシーンで使える便利なイディオムを紹介します。
特にビジネス英会話を学んでいるという方は、ぜひ参考にしてください。
by the book:「ルール通りに」
“by the book”は、「ルール・マニュアル通りに」「規則に従って」という意味のイディオムです。
by the bookを直訳すると、「その本の通りに」となりますが、この“book”はルールやマニュアル、型を指しています。
例文
・Sometimes, doing things by the book isn’t enough.
「時にはルール通りにするだけでは十分でないことがあります。」
・It’s easy if you do it by the book.
「規則に従って行えば簡単です。」
call it a day:「(仕事などを)切り上げる」
“Let’s call it a day”の直訳は、「それを1日と呼ぼう」ですが、「今日はもう終わりにしよう」「ここまでで切り上げよう」という意味になります。
例文
・Everyone seems tired so let’s call it a day.
「みんな疲れているようなので、今日はもう終わりにしましょう。」
・Why don’t we call it a day?
「今日はここまでにしましょう。」
on the same page:「同意する」
“on the same page”の直訳は、「同じページの上に」ですが、「同じ考えを持っている」「同じ考えを共有している」という意味のイディオムです。
打ち合わせやミーティングなどのビジネスシーンでよく使われるので、覚えておくといいでしょう。
例文
・Let me make sure that everyone is on the same page.
「みなさんが同じ考えで一致しているかどうか確認させてください。」
・Are you on the same page?
「あなたは私と同じ考えですか?」
up in the air:「まだ決まっていない」
up in the airを直訳すると、「宙に浮いている」ですが、「まだ決まっていない」「漠然としている」状況を表すイディオムです。
例文
・The schedule of the meeting is still up in the air.
「そのミーティングのスケジュールはまだ決まっていません。」
・That’s still up in the air.
「それはまだ決まっていません。」
compare apples and oranges:「比べようがない」
“compare apples and oranges.”の直訳は、「リンゴとオレンジを比べる」ですが、「比べようがない」「比較できない」という状況を表します。
例文
・I don’t know how to answer that question because it’s like comparing apples and oranges.
「比べようがないので、(その質問には)どう答えていいか分かりません。」
・You get nothing by comparing apples and oranges.
「比べようがないものを比べていては、何も得られません。」
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まとめ
今回は、英語のイディオムの覚え方と実際に覚えておきたいイディオムを紹介しました。
イディオムを知っていると、英語を聞き取りやすくなったり、会話の幅が広がったりするなど、様々なメリットがあります。
すでに十分な英単語の知識がある中級者~上級者の場合、イディオムを学習することで英語力をより一層底上げすることができます。
この記事で紹介した以外にも、たくさんの興味深い意味を持つイディオムがありますので、参考書や海外ドラマなどを活用して、楽しくイディオムを学習して英語の表現力を広げていきましょう。